早馬

娑婆の雑念に迷わぬが仏門の境地と知るも相手は千年の神事すら覆す災禍。半数以上が「辞退」との意向に「さもありなん」と寛容な姿勢を見せるは住職。対する檀家の本音や、客人をもてなすは億劫、ましてや住職とあらば丁重に迎えねばならず、まさにそれこそが好機、あわや来年以降も、と。恐るべしコロナ、ならぬ檀家の深謀。

薄れゆく絆。昔は遠い親戚にも早馬を飛ばしたものと懐かしむ重鎮。さすがに早馬は髷(まげ)の時代の話、せめて飛脚、いや、郵便でしょうに。訃報に記されし「近親者のみ」の字句に躊躇するは私のみにあらず。死人に口なしといえども礼を欠いて枕元に立たれても。御遺族方とて熟慮の結果に違いないのだろうけど、意外と本音は別のところにあったりもして。

割れる判断もどこ吹く風、仮にそんな席であっても人の輪が育まれれば故人とて本望、何を悩む必要があろうか、と豪語するはあの御仁にて何も仏門に入らずと。「自粛」二文字が席巻する中に往生遂げるは不本意、されど、万一の際は盛大に、と意向を言い渡されるも実際の当事者は当人ならぬ残された遺族、と苦笑する御子息。

閑話休題。開催危ぶまれし定例総会を終え、無事に大役を果たされた議長の慰労、というよりも次なる懸案を整理すべく御当地に足を運ぶこと三たび。何も自治体の規模が市の優劣や「長」の資質を左右するものになく、そこを見誤らぬよう、との天の声に低姿勢を貫けど、相手の見る目や別。県内三政令市の議長がそろって訪ねるは前代未聞、自らの威信を誇示せんと意図したかどうかは知らぬも異例の歓迎ぶりに市長を紹介されたのが半年前。

市長同士とてどこかに会うやもしれず、南足柄市には随分と懇意にいただいて、と伝えたことを覚えておられ。県内の市長が集いし会合の折に市長自ら相手の市長に声をかけたらしく。大変喜んでいたと向こうの議長に聞いた。かつては市長の公約に敢然と反対票を投じた身なれど今や議長の職にあって不仲とあらば示しがつかぬ。対岸のこととは申せど、それで両者の関係の改善が図れたのであれば。

そう、前回の続き。災害時における避難所の指針は分かった。されど、忘れた頃に降りかかるが天災。ゆえに季節はいつもそことは限らず、退避した体育館が避難所ならぬ拷問部屋では始末に負えぬ。早急な対応を、との声を酌んでか下されし決断。この間、立ちはだかるは財政の壁。冷房設備といえど普通教室の比にあらず。ましてや普通教室の冷房なども経年劣化に全校の更新を図るそうで体育館には冷房ならぬ冷風扇なるものを配備すると。

そちらは単に風の循環、いや、「冷」が付く分、扇風機とは似て非なるものと推測するもその性能やいかに。既に導入されし実例を自らの目で確かめた担当の行動やよし、冷房に負けず未だ製品残るは性能の優れる証、と期待寄せつつも他人の話に拭えぬ不安。来る定例会に補正を計上して来年度内には全校の体育館への配備を終えるとの報告に急ぐは結構なれど節約と拙速が過ぎて無用の長物とのそしり招かぬよう検証はくれぐれも入念に。

(令和2年11月10日/2605回)