寒桜

山の麓に咲きし寒桜、多少ひねって「裏山を案内せんと返り花」と一句。本来の季節と異なり咲く花を返り花というのだそうで。春に桜が咲く頃には。苦節四十年、位人臣を極めた以上はあと「半年」をつつがなく。そんな下心はすぐに見透かされるもので、退職後も歴史に名を刻む管理職として語り継がれてこそ、と隣部屋の主をせっつくもどこまで響いているか。

方や庁内にその辣腕ぶりが知れ渡るH理事などは定年前の置き土産とばかり向こうから部屋を訪ねていただいて。要注意二人の密室は危険、あてがわれし目付役を横に話を聞いた。前のめり感こそ否めぬもそんな突拍子もない、いや、大胆な構想を成就させるは貴殿以外におらぬ、定年延長を推挙しておこう、と世辞を述べれば、冗談さておき、と副議長。

献立こそ異論なくも盛り付け未完のままで委員会に報告されては腹をすかせた狼たちの餌食になりかねぬ。今一度、内容を整理した上で報告すべし、との助言に翌週の報告は見送られたとか。よもやあり得ぬとは思うが、「御蔵入り」にならぬことを祈っている。

閑話休題。近く市政だよりの配布規則が見直されるとか。百年にならんとする市の歴史においてそんな取組が実施されたのは戦後まもなく。時々の最善と思しき判断の積み重ねに今日を迎えるも満身創痍というか継ぎはぎだらけの状態に瓦解を招きし最後の一突きは...。

当初は月一回とされた発行を二回にした上で、従来の町内会・自治会を通じた配布から内一回を新聞折込としたのが二十年前。読者の期待に応えんと発行回数を増やす一方、配布の手間の軽減を狙った意図こそ窺い知れるも伸び悩む配布率。

前者こそかろうじて七割を維持するも後者は下落の一途に今や五割に及ばず。近年のスマホ普及に多様化する広報媒体、市も時代に適合すべく手を打てど、やはりそこに頼らざるを得ない一定層も存在する訳で。外出自粛の禁止令とあらば尚更のこと、待てど暮らせど届かぬ状況に隠せぬ苛立ち。

配布方とて業者にあらず、あくまでも町会の運営を支える無償奉仕の面々にて仕分けに集うは「密」を生みかねぬと示される難色。顔を合わせて育まれる絆こそ地域の宝、加入世帯には配布の特典と知るも昨今などは人との接触を避ける、いや、避けるどころか煩わしい、役員を輪番制で負わされるは億劫などと、そちらはそちらで岐路というか正念場を迎えており。

二回を一回にすることで財源を捻出し、ポスティングによる全戸配布を実現するとの意図や悪からずも配布の対価として支払われてきた補助金を失うは町会に痛手。そりゃ既得権益、などと揶揄するなかれ。相手の善意に負う面が大にして業者への委託に比べれば遥かに割安、名目も補助金ならぬ謝礼金であり。そんな団体だから金銭の多寡など二の次、何よりも疲弊する現状に配布は重荷と「返上」求める声の一方、「継続」方とて弱からず。

今は業者委託やむなしの膠着も残りし火種。割れる意見に市が模索するは「選択制」。余地を残さんとするも学区以上に複雑な境界にあくまでも任意の団体とあっては。その数は区に百以上とされる全町会の意向を見定め上で業者に委託するはかえって非効率な上に格差生じかねず。着地点をいかに見出すか。

(令和2年11月15日/2606回)