別荘

5GならぬG5、名前負けの会合に関東五市の政令市の議長との懇談を終えた。恥は晒さぬに限る、じっと黙して隣の言い分を聞き入っていたのだけれども雨水と汚水の混在による弊害は小さからず。雨水公費に汚水私費の原則も分流であればこそ。下水道の分流化を急ぐ相模原市にのしかかる莫大な負担。本市の下水道などとうの昔に。

隣人の庭は青く見えてか羨望の眼差し向けられるは臨海部。船の来ぬ港は要らぬなどと不要論を公言して憚らぬ勢力も残れどコンビナート連なる京浜工業地帯は高度経済成長の原動力にて未だそれを有する利点は小さからず。あちらさんなど企業と申しても工業団地の類にてその規模や雲泥の差。美濃の道三が隣国を狙いし理由は領地以上に海。古来、その地が栄えるに海は欠かせず。

関東五市が集うに理想は都内。各市には東京事務所なるものがあって、今回は千葉市の東京事務所が会場。本来の目的は国会議員や各省庁等の「日常的」な連絡調整の対外窓口とされ、およそそれらしき名の建物の一角を占め、霞ヶ関詣を主な任務とする駐在員にその立地や面積などが物好きの話題に上がってみたり。

日本都市センター会館などは千葉市に限らず他の政令市も少なからず入居しとるのだけれども利便性よく、千代田区平河町なる住所とあらば賃料とて。借りる以上は世辞でも述べねばあるまい、さすがは千葉市殿、と申し上げれば、貴市とて劣らぬ、と相手。いや、屋根裏部屋ではないか、横から口を挟みしは筆頭格のあの市の議長。

本市の東京事務所が入居するは市政会館。市政会館などと言われてもピンとこぬ、名前から察するに前掲の会館並みの水準を想像されがちも重要文化財に指定されそうな、いや、「されている」その建物は大そう古く上階とあらば昇降機の最上階から更に階段を迷路が如き廊下を右往左往しながら。

本市以外には政令市市長会の事務局や広島市なども入居されており、そこに陣取るは政令市としての歴史を有する証拠などと言われたりもするのだけれど、賃料があちらと遜色ないと聞かば、んな権威など捨てて利便性を取るべきではないか。そう、市政会館などとというより日比谷公会堂と説明した方が話が早かったか。

あれから報告がないではないか、と朝に独り言をつぶやかば夕方には呼ばずと向こうから報告にやってきたとかで、それは部屋に盗聴器が仕掛けらとるに違いない、と副議長に囁いたものの、こちとてそれから日をあけず所長自ら報告と出向いて来られ。「今後の東京事務所について」とのタイトルに我が意を得たりと頁をめくれば末尾に見えし「退去」の二文字。

けしからんと憤慨してみるもそれこそが時代錯誤。惰性とは恐ろしきものと知るも釈然とせぬはその理由、「これまでの機能に加えて企画調整機能を強化する」とあって、んな取って付けたかの理由付けずと地の利を生かして経費縮減を狙ったと堂々と言えばいいものを。清水の舞台から飛び降りる、いや、今後の財源を捻出すべく「別荘」を売却したと思えば、違うか。

(令和2年11月20日/2607回)