冤罪

トナカイの国、カナダ在住の妹夫婦よりひと足早く子供たちにクリスマスプレゼントが届いた。添えられた手紙にエミリー・ブロンテ「嵐が丘」は父親も読むべしと。

仕組まれた盗聴器の内容が白日の下に晒される例は枚挙に暇なく。その行為はいかなる理由あろうとも卑怯であることに弁明の余地なくも「前段」なくして結果なし、いわゆる「挑発」を割り引いたにせよ過去の潔白はあるまいに。

闇討ちは卑怯なり、あくまでも刀を抜く用意がある、と覚悟のほどを伝えにきたはずも、んなことを許しては本音の話が出来ぬではないか、権利の侵害、全体の信頼を揺るがしかねぬ、と扇動されて広がる波紋。

「恫喝」か否か、そりゃ主観に負うもの。精神的な負担が限界にて健康被害が懸念される、ついては、両者の齟齬を防ぎ、正確を期す為に自らの判断で録音機を用意する、いや、せざるを得ない、と御大将自ら心境を吐露されて。「それはさぞ」と同情したに過ぎぬも吐露が「打診」に同情が「許可」に解釈されて一斉砲火を浴びた。

それこそが「齟齬」の最たるもので録音機が必要だったナ。信用しておらぬ、と告げるようなもんにて不本意は相手とて同じ。裏を返さば録音機を置かれて困るやり取りが横行しとるということであって、せざるを得ぬ、との相手の心境を忖度できねばこの稼業に向いとらんのではないか。

叛旗組の言い分は以下に集約される。ほんの一部のせいで全体の信頼が損なわれるは遺憾、当事者の名を明らかにした上でそこに限定すればいいではないか。役人方とて聞かば十人中十人とも否定的にて困るはむしろ相手方、そこが不憫でならぬ。ふむ、そこに同情寄せるは立派なれど悲しいかな選択権はあちらさんが有しとる訳で都合悪かば持参などせぬ。

当事者の名を明らかにせよ、と迫るもそれこそ相手方の情ってもんで個人名が出た途端に逆ギレするはよくある話。「怒らぬから正直に白状せい」など額面通りに受け取れぬ。覆水は盆に返らぬゆえいつまでも残る遺恨。取調室の可視化に同じ、見られぬをいいことに鉄拳が飛ぶは卑怯なれど可視化とて罪人に塩を送ることにもなりかねず。公開と保護は表裏。

何もこちら側が「悪」とは限らぬ、他に目撃されておらぬをいいことにありもせぬ「恫喝」をでっち上げて、調査権を妨害しとるとすればこちらが冤罪。役所側の不誠実な対応とてゼロにあらず。恫喝の議員か、はぐらかしの役人か、ならば余計に可視化したほうが好都合ではないかと思わんでもなく。

まぁそもそもにそんな申し出を受けること自体が恥ずべきことで、誰しもが大なり小なり負い目あって然るべきも「身に覚えはない」、他人のせいでとばっちり受けるは甚だ迷惑、と悪びれぬ無神経ぶり。まず、相手をあげつらう前に自らの胸に手を当てて過去を振り返ってみてはどうか。

そんなつもりではなかった。パワハラってのは言った方は気づいていないもんだから。

(令和2年12月20日/2613回)