備前

「年玉に勝る珍果や備前産」と一句添えて礼状を書いた。季語は「年玉」。週にたった十本、しかも、そこでしか入手出来ぬとか。M越、T島屋ならぬ御当地のT満屋こそが最上の百貨店と信じて疑わぬ地元民。そんな時の為の役職であって兄弟分の議長に「食わねば年を越せぬ」と所望したところ直ちに箱が届いた。勿論、寒空の下、御大将自らが列に並んで下さったに...んな訳ないか。こだわりの国産バナナの話。

並ぶ白菜に目立つ優劣なきはずもいち早く売切れし理由は生産者のラベル。客観的な裏付けに乏しい表現は不当。「日本一」「おいしい」などは典型例であって、「丹精込めた逸品」と添えただけとA子さん。人が惹かれるは味以上に「物語」。ワインなども嗜好の世界にてそのへんが左右する面も小さからず。いかに物語を生むか。そう、この冬が初出荷とされる早野の苺。開店前に並ばねば入手困難と生産者に煽られて訪ねど一日早く。聞かば、翌日の出荷分は全て予約済と。まだまだ備前の議長の域には達せず。

蔓延る偏見に私が先鞭をつけるは一向に構わんのだけれどもさすがに好き好んで池に飛び込もうなどと思うはずもなく。幸いに未だその手の報告なき市議会。陽性が見つかりし際の対応を巡る会派間の調整付かず越年の結論となった。公表か非公表か、そもそもに市の公表基準に則れば「麻生区、六十代、男性、自営業」となり、個人を特定するは困難。されど、最後の職業欄が「市議」ならばどうか。それは副議長ではないか、とバレてしまう訳で。喩えが悪いか。

いや、それは公人であるが故の宿命にて当人はやむなしと知るも公表に躊躇するは身内への影響からとか。そもそもにその偏見こそが悪であって払拭されねばならぬ。職業に貴賎なし、相手の職業により目線を変えてはイカン。いや、愚息の証言によれば、少し前の国語の授業に「敬語」を学んだそうなれど、敬語を使うべき相手は誰か、との問いに「山崎の父親」と即座に答えた生徒がいたというが、まさに模範解答で君の評定は「五」でよろしい。

医療崩壊の寸前、と聞くも黒死病、いわゆるペストの惨劇、阿鼻叫喚の地獄絵図に比べればどうか。悲鳴上げるは医療のみにあらず、未だ続く追跡は保健所の役目なれど増え続ける陽性者の大半は無症状。現場の疲労は極地だそうで、破綻の前に敷居を下げてはどうかとぶつけてみたものの世の風潮に抗いきれぬと担当者。巷では廉価で手頃な検査が浸透しつつあるものの、不都合な事実は隠されて不思議なく、眼前の人とてあくまでも未検査というだけで陰性とは限らぬ。であるならばそこまで完璧を期せずとその労力をもう少し別な方面に向けてはどうかとも。

どこぞの自治体では検査拒否に罰則なんて条例が話題に上がるも過干渉が生む社会の対立。一部に焦がれるワクチン接種、実施主体は市なれど県の関与とて避けられず、混乱招かぬ為の準備を求める質疑を聞いた。不安拭えぬ臨床に実際の症状と副作用の天秤でどうか。せぬは戦犯とばかりに批難が向きかねず。分断が生む悲劇こそ真の脅威かも。

(令和2年12月25日/2614回)