酒肴

自叙伝の出版に一文を頼むとの依頼。こちらの肩書を利用して自らの権威を示さん、というよりもこちらの宣伝に一役買わんとの厚意らしく。労こそ厭わぬも表舞台は苦手、目立たぬに限る。相手は齢九十に迫らんとする御仁にていづれ忘れるに違いないと空返事をしておいたのだけれども「まだか」と督促の御電話をいただいてしまった。

不動産を生業にする雄にて何度か市との仲介に骨折るも役人に言わせれば私など介さずと十分に「手ごわい」相手だそうで、むしろ役所側の使者として当人を宥めることが多かった、と回想を盛り込んだ。ボツだナ。

こちとら吹雪の中を通いし身にて子の送迎など贅沢であって、贅沢こそ敵と拒んでみたものの、夜会の中止にヒマを持て余しておるのだからつべこべ言わずにさっさと行け、と上長ならぬ妻の命。路上を埋める塾待ち車両に今どきの子らの将来を憂いてみるもそれが時代の要請と知らば。ということで今日もそんな話。

当局が相手するは議員、その実像に幻滅するやもしれぬ、が、とるに足らぬ人物に見えても選挙の際はその名を記す為だけに何千人という有権者が投票所に足を運ぶは当人に何かしらの魅力がある訳で。詐欺かもしれぬ、いや、そうに違いない、されどそう思わせることが肝心で、この職場とて他局から行けずとも行ってみたいと思われる職場を目指そう、と檄を飛ばした甲斐あってか異動先として人気、とりわけ「女子」に、と聞いた。

「認めてくれぬか」-「認めぬ」、そんな応酬は少なからず。が、前者が局長で後者が担当とすればどうか。聞けば出張規定に距離が一キロ足りぬと。フツーはそこに働く忖度も妥協許さぬは職務に忠実なY川君。そう、役所は杓子定規をモットーとするのだから当然。往生際が悪き局長を周囲がバカだなと笑うその風通しの良さこそが局の魅力。ちなみに局長は「現」ならぬ「前」にてあしからず。

が、そんな牧歌的な職場は議会局位なものらしく。パワハラを告発する訴状というか嘆願書が届いた。そっと机にしまってみたものの既に広く出回っとるとか。当時は体罰が横行する時代、その理不尽な中に洞察力や処世術が磨かれる、と自らの半生を正当化してみても時代錯誤の価値観は今の世に通じぬ。

「どうするつもりか」と詰問されて、「副議長に任せてある」といつもの回答をしてみたものの、相方や「議長の判断待ち」などと言っておらぬと願いつつ。真相究明に着手せんと思えど主は匿名。匿名は卑怯也と一蹴するに惜しく。現行の内部通報制度では身元がバレかねぬとの懸念はまさに。

まずは自らの胸に手を当てて、などと自浄作用に淡い期待を寄せてみてもそんな御仁に限って自ら認識しておらぬばかりか相手によって豹変するから。不意打に限る、とばかりに合間を見て顔がバレぬよう庁内を行脚しておるのだけれどもまるで違う雰囲気に知る職場の事情。悪評とてちゃんと。

およそその手の話は今日に始まるにあらず。上司の悪口というのはいい酒の肴になっていたはずなのだけれども、ここに至って噴火するは機会を奪われた鬱憤も絡んではおるまいか、と。

(令和3年4月15日/2635回)