東名

任期中の単なる事実がさも自らの手柄と言わんばかりに語られるはこの世界のみにあらず。そりゃ他人様が評価するもんで。そのイスがチラついて完走を断念したのはセコかった、と就任の前日を振り返ってみせた退任の挨拶。

復帰初戦の結果は散々ながら帰りに立ち寄りし長野県川上村のレタスが抜群に旨かった。と申してもシャキシャキ感に新鮮さを堪能したというのが実際のところ。早朝に集結するトラックに間に合わせるべく収穫は深夜。漆黒の闇をほんのりと灯りが照らすさまは何とも幻想的で。そう、我が国が誇る物流に今や産地ならずとも。

目下、本市の北部市場、正確には「川崎市中央卸売市場北部市場」の老朽化に伴う再整備が予定されており。水産仲卸の代表団から会派宛の要望をいただいた。市内には南北に一つづつ市場があって、南部など「売らんとする意欲に乏しく既得権益に甘んずる連中の道楽に過ぎぬ」と手厳しく叱責された過去あれど、今や適正化が図られた上に余剰地の活用に余念なく。では、一方の北部はどうか。

首都圏全体を俯瞰すれば水産の豊洲に青果の大田が双璧。大田が狙うは空輸。空港に近接の立地を生かさんと。そりゃ結構、されど、やはり渋滞なくば物流は陸路に限る。混雑著しい都心の迂回路として設計された圏央道や外環道など物流面への功績は大にして利便性が格段に向上した東名高速。

売るも買うも円の芯を目指すは非効率。円の内に大量消費地を抱え、外は産地に近く。東名川崎インターからわずか。尻手黒川線の渋滞と申しても搬入は深夜早朝。天下の大動脈の外縁なる絶好の立地に外的な条件は整った。あとは市場としての機能をいかに高めるか。

市場は生き物。仕入れなくば銭にならず、仕入れども残れば損失。生産者と消費者を直接つなぐ流通の変化に「中抜き」進む、といえど個人相手では商いの規模は知れとる訳で。何も血眼に隠れた逸品を探さずと目利きが厳選した品を市場から全国各地へ届けんとページを充実させてみたり。そう、無観客といえど好業績に沸く競馬や競輪を見れば御当地に「行かず」と。食と健康が注目を浴びる時代、廃れるどころか潜在的な需要は十二分に。

さて、肝心な要望の内容。再整備に向けて意見の聴取を終えたとか、現場の声を聞かんとする姿勢こそ評価すれどもそれが建前にあらぬことを願っている。と申すのも、そこに暗躍見せるはコンサル。我こそは各地の成功例を知る市場再生の救世主なり、田舎侍は黙っておれ、と肚にイチモツありそうな雰囲気だけは伝わるんだろうナ。

再整備に向けた発注者は市のはずもいつしか立場が逆転していたりもして。およそ資金調達を含む民間活用などアルファベット三文字の数値を示されて、どうせ理解できんのだからと上から目線で決断を迫られるなんてのは腑に落ちぬ。その矛盾点を突くなんぞ。

いや、何よりも民に委ねんとするにその後の責任の回避を狙う小役人的発想が潜んでいたり。やっちゃばのオヤジとあらばそんな目利きにも。杞憂に過ぎぬか。

(令和3年7月20日/2654回)