大峰

式典と聞くに「らしき」格好にて出かけたものの。ボランティアの皆様のみならず、庁内にファッションリーダーの呼び声高い、というか「自認」する区長までもが予想に反して。車の中でTシャツ姿に着替え直してようやく場に溶け込んだ。パラリンピック麻生区採火式のひとコマ。が、んな経験は私のみにあらず。

初登庁に目の前に並んだ幹部、五十人。当人以外の男性はすべからく白シャツ。必携とされる心得には「シャツの色は白、ジャケットはつねに着用」との一文。名高い創業者が規則を作った時代は訪問先の相手はダーク・スーツに白シャツ。顧客に敬意を払い、適した服装を、との意図のはずも規則だけが独り歩き。今や相手の服装とて。何週間後の同じ会議では当人だけが白シャツで他の全員が色物のシャツだった、とか。

大企業病とされる症状はそこに限らぬ。振りかざされる「経営」の二文字に植え付けられる劣等感、知らぬ世界とばかりに相手の弱みにつけ込んで都合よく利用されとるフシはあるまいか。では「経営」とは何ぞやと聞くに的を得ぬ回答。何も「経営」などともったいぶった表現を使わずと。あれだけの倍率を抜けてきたのだから能力は劣るものになく、いかに組織を導くか。

全世界の従業員数三十万人、名門の凋落を見事に再生した経営者の回顧録の題名や「巨象も踊る」(ルイス・ガースナー著)。何もゴリアテだけが賛美されずと。

ブームの火付け役、漫画「神の雫」の最終章が完結、と知った。目下、本市もワイン特区なるものの認定を受けて、岡上の異端児、いや、革命児がその分野に挑んでおり。そもそもに歴史と文化が違う。東洋の一小国のワインなど、との偏見はあの甘いブドウ酒をワインなどと呼んでいた頃の話。わが国のブドウといえば九割が「食用」も世界を見ればその比率や逆、九割がワイン用。

当時の食卓に並ぶはデラウエアか巨峰。デラは粒小さく、巨峰は皮に種、と食すに手間多く。それが今やあれだけのモノが生みだせるのだからワイン用とて。ばかりか、「不適」とされるそのブドウとて生の味を堪能するに世界に類を見ず、いや、隣国に気付かれてはサンマが如く品薄になりかねぬゆえ内緒に。そう、少し前に食べた「大峰」なる品種が抜群に旨かったナ。

ということで国産ワインの応援団なのだけれども少なき収穫を補わんと輸入原料であっても醸造地が日本であれば「国産」を名乗れるとか。いやいや、やはりワイン用のブドウとて国内で。何も神に約束された土地にあらねば珠玉の一本は生まれぬなどとは科学的根拠なき妄信に過ぎず。土地がワインを生むというよりも生まれたワインに銘醸地の称号を得るというべきか。世界に誇る食文化にそれを支える生産者の執念と探究心をもってすれば。

流入する投機マネーが跳ね上げる相場は残念な限りも何もボルドーの五大シャトーだけがワインではない訳で。あくまでも嗜好の世界。高からずと気に入った一本を探しに、行きたいところなれど。

(令和3年8月20日/2660回)