女心
兵どもが夢の跡。神棚の枯れた榊と高く積まれた段ボールというのが共通項。それだけはまかりならん、が、頒布するにも足りぬ人手。金銭で解決図らんとするに課せられた厳しい制約。およそ過去の容疑の大半は運動員買収。
表向き無償とされた相手に支払われし報酬。ほとぼり冷めたら後で必ず、との口約束に。無償か否か、見ればおよそ見当が付くもので。ゆえに地元の熱心な支援者こそ貴重な戦力。人海戦術にて無償兵を募れど年齢的に。となると市議というのはまことに都合よき存在として浮上するらしく。
ということで、次なる指令はポスティング。労は厭わぬ、が、何よりもあの御仁が表紙を飾る政策パンフは一冊が重く、一回につき五十部が限度。補充するにも戻らねばならず、何度往復したんだろう。
畑仕事の支援者を無視する訳にもいかず、道ゆく支援者に声をかけられ、「父が自宅におりますのでどうぞ顔でも」-「いや、あの父君が御相手とあらばそれで一日が終わってしまいますゆえ」と非礼を詫びつつ。
急転直下の決断に奇襲されるは野党のみならず。割増の目標は選挙が来月と踏んだから。そこに歩いた距離を加算してくれれば相当に「稼げた」、いや、実際に「アリ」なのだけど、経路や直線にあらず、万歩計にGPSなどスマホ機能が使いこなせぬだけの話。
〆切に重なるは投票日。運動は前日までにてその一日に「賭ける」選択肢もあれど、夏休みの宿題じゃあるまいに、天気とて先は読めぬ。夜な夜な地道に積み上げし距離は達成目前。が、あとは余裕、と思うその油断こそ命取り。
「過半数超える勢い」の見出しの影響やいかに。過ぎてはならぬ、との抑制効果か、勝ち馬に乗れの追い風か。評論家の解説はいづれも結果を見ての後付けにて。情勢分析は欠かせぬ。接戦と知らば投入の甲斐あれど、届かぬならば他に回した方が全体の勝算は高まる、という非情な世界。最終日の大物投入は善戦の証、というか「接戦」というのが。
相手との差は何ポイントなどと調査結果に振り回される陣営。購入した株価に一喜一憂する初心者が如き。移ろいやすきは女心と秋の空。人の心など、んな正確に読める訳がなかろうに、と一笑に付すは尚早、昨今の結果見るに侮れぬその精度。
終盤戦ともなれば満身創痍。不手際に叱責されるは秘書の役目と知れど、それが負の空気を充満させては逆効果。必死さは分からんでもないが、緩急なくば息が詰まる。「北風と太陽」に学ぶべし。加勢に来たのに誰もおらぬ、なんてことに目くじら立てるは昔の話。そんな不測の事態に備えてポケットに忍ばせるは一冊の文庫。
自伝なるものは当人に都合よき過去を綴ったものにて話半分、との認識もどこへやら。「一人物の生涯の物語は、やたら編集者が手を入れるべきにあらず。情熱は勿論、誇張さえも物語の一部として読者は受け入れるべき」と序文の解説にあって。「明るい性格は財産よりも尊いもの」と文中に見かけた。鉄鋼王アンドリュー・カーネギー自伝。
(令和3年10月30日/2674回)
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