筆箱

子を想う親の心に国境なく。息子が世話になった、と遠き異国から訪ねていただいて。御礼に、と手渡されるは木製の筆箱。カナダで大工職人を営む当人が丹精込めて作った一品。議長室の棚に飾っておいたのだけれども盗難、いや、息子の入学祝に譲ってくれぬか、と運転手にせがまれて、あげちゃった。

研修員受入プログラムにて本市の国際交流課に在籍していたC君。一昨年、姉妹都市のボルチモアを訪問した際に通訳を務めてくれて。ボケにつっこみ、漢字まで流暢に操るばかりか雑用まで、本当に助かった。庁内にて不当な扱いを受けておらぬか、との心配も、メガネが似合う年齢不詳のK課長と親子ほど齢の離れたH部長にはとりわけ親切にしてもらって、と本人。

んな人物は自ずと昇進を遂げるもの、今や局長に昇進されて。そんなC君が急遽帰国の途につくことになったとH局長から報告を受けた。健康状態が優れぬ母親の看病の為と。ならばメシでも一緒に、と打診すれば、既に昨夜、と。

私を誘わぬとはつれないではないか、と詰問すれば、万が一の際に迷惑をかけれぬ、などと寝言を。んな気を遣っているように見せて毛嫌いしとるだけではないか、とは言わなんだが。それにしてもセメント通りの焼肉屋とはさすがH局長。チャーリー、元気でな。

さて、学生相手に特別講義を、との依頼。人情話か恋愛論ならばまだしも「特別自治市」など人選が間違っとる、他の適任者を探すべし、と丁重に御辞退を申し上げた。本市も来年度の組織改正に新たな担当を設けるとか。

県市民税以外に固定資産税を主な財源とする市に対して法人事業税を柱とする県の財政や不安定、となると狙われるは政令市。相応の負担は当然との県に対して、ならば更なる権限も、と政令市。実現には県の理解が欠かせぬということらしく。「道府県、指定都市の認識に齟齬が生じていることが大きな問題であって、共通認識や理解を得る努力が双方に求められる」とは県が設置した有識者による研究会の見解だそうで。

権限を手放すに手間も減りそうなもんなれど同時に薄れるは存在意義。政令市以外の県議ならば賛同してくれそうなもんなれど隣の顔色を窺うに。役人とて行政区としては全域なれどそこだけは手出しは出来ぬは何かと面倒。二重行政の解消は不変の真理にてそれさえ唱えておれば有権者の関心を惹ける、ヘンに前に進まぬは双方に好都合、なんて下心はないことを願いつつ。

んな制度論だけ言われても分からぬ、具体例を挙げよ。ならば一つ。特別な支援を必要とする児童の増加に追いつかぬ受け皿に求められるは養護学校。原則は県なれど、政令市とあらばその限りにあらず、許される権限に本市独自の「市立」養護学校を抱えるもそちらも飽和状態。新たな需要への対応は県か市か。昨年末に県が新設の意向を固める一方、当面の間は「市立」の増改築にて枠を確保することで折り合いが付いたとか。

要した歳月や言わぬ。が、押しつけ合いの皺寄せは弱者に向きかねず、そこを救わんとの使命感こそ制度の前に。読者諸賢には嫁姑の争いにしか見えぬ、って。

(令和4年2月15日/2694回)