石橋

海老で鯛を釣らんとの意図など。多分に「義理」と知るも悩む返礼品。「座替えのわくわく感や春来たる」と一句添えて。そう、ホワイトデーの話。

人事異動の季節。会期中に露呈すれば何かと工作が行われかねぬ、との警戒心か、内示の発令は閉幕日。輪をかけてそこに狙いすましたかの如く迎える解禁日。が、そこは石橋を叩いて渡るが役人ってもので。

昨年なども定年を迎えるM局長の送別会を催さんと打診するも首肯せぬ本人。酒席とあらば予期せぬ失態なんてのもなきにしもあらず。とすると、それまでの苦労が水の泡になりかねぬ。いや、それで後世に名を残せるならば退職金など惜しくはあるまい、と告げれど一笑に付され。まんまと逃げ切り勝ちを許してしまった。そもそもに当人は下戸だったはずなのだけれども。

局長とあらば引く手あまた、でもないか。部長や課長、そして万年係長といえど、どこからも声がかからんというのは何とも寂しい。かつて、キャラが立ちすぎて昇進し損ねた課長の退職に一席を企画したことがあり。

いえいえ、我々公務員は誤解されかねぬ行動は厳に慎まねばならぬ、が、折角の誘いゆえこのたびだけは厚意に甘えるもくれぐれも職場には内緒で、との返答に極秘裏に進めたつもりが。肝心なことを聞き忘れた、と当日の午後に電話をすれば、応対するは部下らしき相手。「今夜は課長が御世話になるそうで。上機嫌でしたよ」と。課長の理由がよく分かった。

冗談はさておき。「石橋」をモットーとする役人が示した「今年度内に必ず」との方針が反故、いや、結論が得られぬとあらばよほどの事情があると察するが妥当。難航が予想されるはミュージアムのみにあらず。常任委員会にて「中央卸売市場北部市場の機能更新に向けた検討」なる報告を受けた。

そこに明確な理由があれば非は咎めぬゆえ、との甘い囁きに本音を吐露した途端に態度が豹変、というのは取調室のみにあらず。岐路に立つ市場。将来的な需要が見えぬというのがその理由とされ。先が見えぬはどこも同じ。数字など作文に過ぎず、適当とはいわぬ、そこに何らかの根拠を添えて整然と示す、あとは目標に向けて現実を合わせていくしかあるまいに。

いや、作れぬはずはなく、ならば真の理由やいかに。押し寄せる民営化の波、現状の直営を維持すべきか否か。虎視眈々とそこに参入狙う連中がいないとも限らず、かのサウンド調査を実施したなんてのはその為の布石にあるまいか、との憶測。まずは直営という選択肢を排除してから交渉を有利に進めんと、外堀を埋めるは定石にてまさに狙われる市場に問われる役人の器量。

直営が腐敗する原因はそれを脅かす存在がないからであって、それは民とて同じ。殿様商売というか健全な競争が働かねば官民問わず組織は肥大化、腐敗するが世の常。そこに監督役として果たすべき議会の役目があり。

所詮は人件費位なものであとは直営といえどもやれば何とか。民営化の切り札とされた指定管理者制度とて新規ならばまだしも既存の施設とあらばそこに従事する職員を他に異動させた上で新たな支出が生じるのだから全体として見ればどうか。

まぁ、民に委ねられかねぬ、との危機感が直営にとっても大事な訳で。

(令和4年3月25日/2701回)