膝痛

主不在の事務所にあって留守居役を担うは歴十年以上のMさん。久々に見かけし御顔には見慣れぬサングラス。妙齢の女性の変貌の理由や「外見」というより「健康」だそうで、「いづれ分かる」との一言に片づけられてしまい。

日焼けこそ健康の証、との環境に育ったゆえ今さらそんなことを言われても。消せぬ過去に忍びよる恐怖。個人差もあるというし、ならばいっそ無頓着のままに。目、膝、肌、と予め限界が分かればこちとて抑制がきくのだけれども。

閑話休題。サマーレビューという位だからそこに一つの関門があるのは明白。上げておかねば行革の餌食になりかねず、形式だけでも、なんてのもあったりして。市内の業界団体との来年度の予算要望に向けたヒアリングを終えた。昨年、一昨年と開催の見送り、いや、書面開催などと申してもやはり膝つき合わせるに勝るものなく。面と向き合い本人の訴えを聞かねば記憶に残らぬ。

レース前の緊張感というよりも完走への執着か、わずかでも軽量化を図るべく直前に用を足さんとする往生際の悪さは私に限った話になく、スタート前の長蛇の列は見慣れた光景。排泄こそ悩みの一つ。生存の為に欠かせぬ機能であって。

市身体障害者協会からの要望にオストメイト、排泄時に不自由を有する方々からのものが含まれる。ストーマなる器具を装着することで用を足すのだけれども災害時に特段の配慮を、との内容は数年前「にも」聞いた。声が届いてか、どこぞの倉庫に一定量を確保している、というのが前回の回答。ないよりはマシ、なれどそれではほとんど意味を為さぬと要望方。

まずは有事の際に自らの避難所に届くか否か、集中と分散を巡る議論は別の機会に譲るにせよ懸念は分かった。次なるは固有の事情。一括購入に数量を用意したとのことなれど器具との相性ありて合わねば使えぬ。各自に応じた器具を購入せよとは言わぬ、自ら予備を持参するゆえ倉庫の一部を間借り出来ぬか。利用者とて限定的な上に器具とてそれほどの広さを占有するものにあらず、隅の一角でも、と会長。

確かに合理的であって、何も市が独自の在庫を抱えずとも。そこまでちゃんと相手の言い分を酌んでおれば本来の回答は間借りの可否となり。あくまでも「共有」とされる倉庫に一部の便宜を図らんとするに生じる抵抗はあるやもしれぬ。そもそもに非常時とは申せ、倉庫や避難所となる体育館を外部に利用されることを快く思っておらぬ関係者とていないとも限らず。

防災に問われる連携。今回の要望とて備蓄を担うは危機管理なれど障害者の個々の状況を知るは福祉部門。両者が真摯に向き合っておれば。そこが見落とされた可能性はあるまいか、と役人に責任を押し付けてみるも。そもそもに提出される様式に市の部局を記入する欄があって、そちら宛てに要望が回される仕組み。

相手方が有するはあくまでも「市」に対する要望であって所管部署など関係なく、そこを調整するのはこちら側の役割、相手に記入させるなど。当方の役割分担とて「代表」「進行」「担当」と氏名が記されるも「その他」とならばどことなく薄れる責任感。まずは隗より始めよ、か。

(令和4年7月20日/2723回)