逆襲

宿題に追われるは彼のみにあらず。「公民」とあらば父に聞け、と指示する妻も妻なれど、聞いてくる息子も息子にて。コイツらは本当に父の職業を理解しとるのだろうか。

「透明性の確保や国民の参加などによって開かれた行政を実現したり、官僚制の弊害を防止したりするために設けられた現行制度の記述として誤っているものを、次から一つ選べ」、んな設問が二十問。どこぞの係長試験ぢゃあるまいに。そりゃ聞く相手が違うってもんで、区役所でも訪ねてヒマな管理職に、いない、か。

ならば身内、それも国家公務員がおるではないか。久々の再会に依然と「らしからぬ」服装と見るは職業への偏見。子の宿題など二の次。基礎体力なくして諸外国とは渡り合えぬ、とランとゴルフを勧めとるのだけれども、んな体力バカを目指しとらんで教養を磨けとばかりに紹介されるは一冊の本、というか「漫画」。当人のみならず、仲間内でも評判とか。外交官の必読書はデューク東郷、「ゴルゴ」と知るも今どきとあらば。いや、私と同い年にて。

職員録を片手に押す五桁の数字や相手の内線。上司が不在ならば率先して取るは部下の役目。電話の応対に見る相手の機嫌と性格、職場の様子。上席が会議と知らば「多忙で何より」、休暇と知らば「ゆっくり休んでくれ」、と手を煩わせたことを詫びつつ、受話器を静かに置くのだけれども。

時に間の悪い時もあったりして、怪訝そうな応答も市議と聞いて豹変、逆に当初から親近感を抱かせる相手であったりと様々。こちらが枕高く寝れるは彼らのおかげ。とりわけ、区役所や道路公園センターなど「常連」にてこちらの扱いにも慣れた方多く、役所の不祥事を咎める、というよりも、あくまでもこちらの都合、立場を悪用してゴネ得を狙う、なんて用件が多く、いつも低姿勢をモットーに。

ならば受け側はどうか。会派の控室宛の電話を事務員がさばいてくれる「贅沢」な対応。負担軽減とばかりに「直通」化が促進されたこともあるのだけれども不在時に鳴り止まぬ隣の電話。受話器を取ろうにも手を伸ばさねばならず。取れば取ったで不在を告げるだけでは終わらぬ、かける側とて一向に繋がらぬ上に応じた相手が隣席の不機嫌なセンセイとあっては伝言など頼めぬ訳で、再度鳴らすは代表電話。何ら負担は軽減されるどころかかえって、と元の鞘。

呼び鈴が鳴るは相手の都合にて時に手が離せぬ、後にしてくれ、と言えぬが知られたあの番号。交換手が当該課に繋がんとすれど相手以上にコワ面が多く。「いちいち酔っ払いの相手などしていられるか、こっちは忙しいんだ」、かたや「電話代返せ、税金泥棒」と。繋げ、繋ぐな、の応酬に「かけてくる人もつなぐ先もカタギではない」と過酷な職場に生きる交番女子。

「逆襲」と副題のついた漫画「ハコヅメ」(泰三子作)に見る日本のガラパゴス。「踊る」が空前のヒットを遂げた理由やキャストだけではあるまい。それにしても読んでいて隣の視線が気になるあの画が何とも。

(令和4年8月30日/2731回)