姉妹

相手の年齢聞くに、それも女性とあらば尚更、と知るも就任時に配布される一枚に記されとる以上、チラ見というか「まじまじ」と観察して何が悪い。いや、当人に限った話になく。

沿道を埋め尽くす観衆を前に、脇を固めるは各団体の長、その先頭を颯爽と歩かば「主役」になる訳で。四年ぶりの開催は退職前の花道か。

その後の式典にはちゃんと席が用意されとる以上、何もそこまで目くじらを立てる話になく、と平穏な日々を過ごしていたはずが。ある日、パレードの出演者に我「々」が含まれぬはオカシイ、とある市議が申し入れ。

それとて任意。沿道にて手を振るほうが性に合っとるのだけれども、今や指名手配犯が如く追い回されて。舞台に上がった以上は憮然とした顔でいる訳にもいかず。ふと沿道に目を惹く二人の女性。只者ならぬ雰囲気、やけに目立つ存在感。「まじまじ」と観察するに。

あっ、前区長、そして、隣りに見えるは前々区長。三代続く女性区長。姉妹が如き二人が三女の晴れ舞台を祝福せんと駆け付けたように。いや、あくまでも私にはそう「見えた」だけの話。

既に役を退かれ、つまりは「卒業」されて、しがらみなき立場にてそこに姿を見せるは自ら「欲した」と見るが妥当。現役時より若返りて見えるは肩の荷が下りた証拠か。これでは誰が長女か分からぬ、とは余計なひと言。両名とも御元気そうで何より。

絶好の秋晴れに恵まれての開催は区民祭のみならず。三年ぶりの開催は区老連こと区老人会連合会の運動会。そもそもに「老人」なる名称が侮蔑的というか遠ざかる要因になっとる気がせんでもないのだけれども、その称号を「あえて」名乗る連中とあらば何かと達者にて教わることも少なからず。

年長者を敬う風潮が失われるは国家の危機。と知れど、昨今なんぞは「高齢者をイジメるな」のプラカードを下げて自ら行進する御仁もおられるとか。何も好んで公衆に醜態を晒さずと自然とそんな風潮を作りだすしたたかさこそ齢重ねた知恵というものにあるまいか、と時に思わんでもなく。

最初の種目は徒競走。あの過酷な時代を生き抜いた面々とあらば平等の名の下に全員が同着など言語道断。ゴール後ろの旗は三本、三着までと昔から。スタート上に立つは六人。当時、地元に敵なしの韋駄天ぶりを買われての採用はあの職場。

何せ泥棒を捕まえるに。現代の鬼平を地でいくSさん。今日も一等賞を狙って、と意気込めど結果や三位。いや、並み居る若手を押しのけて三位とは十分に立派な成績にあるまいか、御齢九十にて。

横一列に並ぶ六人が後ろに何組と定まっとる以上、そこに差異が生ずるは理論的にあり得ぬ話。仮に同着だったとしてもさすがにその長さには。異様に長きは二着の列。ズルをするなら一着だろうに。事実は小説よりも奇なり、か。

(令和4年10月25日/2742回)