完売

荒れ狂う強風の中を一番ホールに向かわんとする二人。立会人の制止を振り切って、というか、少なくとも相手より先に口には出来ぬ。と、ぶつかり合う意地。大自然の洗礼こそが醍醐味であって、それを理由に「止める」など。目下、夏坂健氏のエッセイにハマっており。

また、雨でしたね、とは休み明けの事務員。「また」は余計でしょうに。前後両日は快晴なれど中日だけが雨、それも降水確率100%などそうそうあるものになく。どこまでもつきまとう不運。いや、んな悲劇のほうが意外と知れ渡りやすかったりもして。選挙前にはかえって好都合だった、かもしれぬ。

既に代済みの商品の数々。中止ならば大損。という以上に、やるに欠かせぬ人の協力。前日の仕込みに集う女性陣の意欲見れば言うに憚られる「中止」の二文字。チラシには小雨決行とあれど、どう見ても「小」雨には見えぬ。

そんな当日、開催の有無を問う電話に追われるは後援会ならぬ神社の社務所。場所こそ提供すれども主催や別人、あちらにとっては甚だ迷惑な話なれど、「予定通り」と伝えて下さるは管理人の善意。で、肝心の客入りやいかに。

雨降らば投票率は下がる、投票日は快晴こそ願うべし、なんてのは過去の話。今や降らば「上がる」こそ定説であって、冴えぬ空模様に選挙「でも」行くかって。「でも」か。悩む客足、どころか全て「完売」にて三年ぶりのさんままつりを終えた。

閑話休題。隣市がやるならおらが市も、とむき出しの対抗心はふるさと納税のみならず。税か保険か。税が所得の再分配ならば保険はリスクの分散。国民皆保険というからには。相応の報いを得んとするならば相応の負担が欠かせぬ。が、税ならば。見えぬ受益と負担の関係性。小児医療費制度を巡り、自治体間の競争が過熱気味とか。

中三までの拡大に所得制限の撤廃、との隣市に歩調合わせるかの如く本市も。否めぬ後追い感、というけれども大幅に拡充される以上はもそっと賞賛の声が寄せられても。どこぞのイベントに学ぶ教訓。朗報は伝わりにくく。

それとて、あくまでも来年度内に実施される予定の話なれど、既に過去の話とばかりにやり玉に上がるは一部負担金。通院一回五百円は納得いかぬ、隣市などは既に「廃止」を決断しとるではないか、と、どこぞの会派。

何かしらの恩恵を被るに「無償」はあり得ぬ、減額された分は「誰かしら」が負担している以上は当人とて多少の負担があって然るべし、とはそこに限らぬ正論なれど、それすら言えぬ、いや、言わせぬ風潮。繰り返されるは、制度の安定性と継続性を維持する為に、と役人側。

いや、実際に利用者に声を聞いてみよ、彼らにアンケートを実施すべきであって、なぜ、それすらのことも出来んのか、との追及は正義の味方に見えてしまいがちなれど。「いる」「いらぬ」を利用者に聞かば結果は明らか。聞くならば負担する側にこそ。

不満を増長せんとするは人の心理を利用した巧妙な戦術なれど、人の欲は底なしにて。何よりもそこに流されるは当人にとって。

(令和4年11月25日/2748回)