木鶏

区の名が地名か、地名が区の名か。名の由来こそ知れども上下の意まで詳しからず。「下(しも)」などといわば。事実、中心駅に近きは「上」なれど、「下」に名所旧跡、大物の居住多く。

周辺の開発後も残りし立派な旧家。その邸内に隠れ家的なカフェが開設されて。店主はじめ店員が笑顔で迎えて下さるばかりか料理も絶品。久々に地元で過ごす一日。優雅なランチを目当てに訪ねれば店内は満席に近く。どこかで見た顔。農協の婦人部の特別の貸切ということらしく。折角、来たのだから挨拶の一つも、などと言わずとちゃんと向こうから呼び水あって。運も実力のうち、か。

帰路に抜ける早野に見かけるは電動のキックボードにて農道を疾走する中年の男性。遠目に眺めていたのだけれども、あの背格好はよもや。角を曲がって、あ~、やはり。苺園の店主と雑談を交わして後にするも腹減ったナ。

地元野菜を使った献立がメニューに並ぶ農家レストランに農道のキックボードこそおらが区の魅力であって。これも川崎市です。

品位を欠く言動は厳に慎むべし、と知るも。市民の声から逃げている訳ではない、との答弁に憤慨して、それは詭弁だ、と立ち上がれども、発言権を求められし委員長や木鶏となり。延々と続く答弁に一人立ち尽くす姿はさながら廊下に立たされた生徒が如く。こちらに向けられる冷やかな視線、ものの数分が異様に長く。

あの局面において私はどうすれば、と述懐する委員長に、おぬしが指名せぬゆえこちらは無様な姿を晒す、いや、晒し「続けて」しまったではないか、その職責を何と心得る、と詰問すれば、名を呼んだものの局長の「答弁中」との声にかき消されたとの釈明。「呼んだ」か否か、録画にて検証する気にもならず。

そりゃ「呼んだ」にあらず、正確には「つぶやいた」というか、その行為に「及ばんとした」というのが真相にあるまいか。せめてもの救いは中継カメラの向く先は話し手ゆえあの立ち尽くすみっともない姿は動画に残っておらず、そこに居合わせた人しか知らぬ内緒の話。

いつもは用意された原稿を読み上げれども今回は手元になきゆえ、との宣戦布告に始まり。やらせなしの丁々発止を地でいく質疑に寄せられし反響は賛辞というよりも。予定調和じゃなきところだけが野次馬の注目を惹き。大の大人が何を眉間に皺を寄せて、なんて、またもや庁内の笑いものに。おい、こっちは真剣なんだぞ。予算審査特別委員会の質疑を終えた。

冷めやらぬ興奮も一晩寝れば。冷静に振り返ってみると何ともみっともない話で。翌朝の議場にて目が合いし市議会の異端児M君に、怒りに任せて物言わば後悔しかねぬ、と諭さんとすれば、「あれぽっちではまだまだ足りぬ」と逆に。よし、次回こそは、違うか。

そう、施設利用を巡り過熱する二団体の競争の仲介を頼んだだけの話が大袈裟になり。並ぶ役所の理屈に立ち向かってみたものの。理と情がぶつかり合う一戦。議会史に残る名勝負、な訳ないな。録画が公開されとるゆえあとは読者の判断に委ねるも、大事な一言、これ以上の感想はいらぬ。

(令和5年3月10日/2768回)