婚活

笹の葉のおひしく見せて鮨つまむ。季語は鮨。クラシックとは無縁に見えし大将のイチオシがこちら。

起承転結の四楽章。独創的な旋律の中に静かに幕を下ろす終楽章とは対照的な第三楽章をエネルギッシュに演ずるは若き音大生。所詮はアマ、といえども在籍が在籍にて、そうせざるを得ぬだけの話。

幼少より日々レッスンに磨かれた技巧はプロに劣らず、足りぬは経験のみ。その不足を補って余りある情熱。指揮者に向けられる視線や真剣そのもの。そのがむしゃらさこそ。定期演奏会にてチャイコフスキーの交響曲第六番「悲愴」を聴いた。とりわけティンパニーが。

一流オケに比して割安な入場料はコスパ十分、逆に大勢の聴衆に囲まれた大舞台での演奏は彼らの貴重な経験ともなり。演奏する側、される側、老若男女を問わず至福の時を過ごせる空間があるというのは。これこそが区の魅力、長寿の理由だったりもして。んな好循環が生まれる中にあっても需給が結びつかぬは。

急がねば適齢期を逸しかねぬ、昨今は本人以上に親の心配が勝り。知人の紹介とて気心知れた友人ならばまだしも目上の親族とあらば無碍に断れず。そのへんの煩わしさを省く為のイベント、と申しても初対面にてぎこちなく、見渡す中に彼こそは好みと近づかんとすれども既に他が。いや、そちらとて外見とは裏腹に性格に難もあったりして。労多き割に成約率は。

そこにこそ「彼ら」の存在意義があって、わざわざ足を運んで落胆する位ならば。出会い系ならぬ婚活サイトとあらば社会的な認知度もそれなりに、とは申せ、やはり公言するにはどことなく憚られがち。されど、相手としてありがちな同級生とて元々は他人であるし、良縁を求めんとするに手段など。

むしろ、世に広く相手を探す、選択肢が一つでも多くば互いに益となるばかりか、相手の写真や嗜好などじっくり観察した上で「自ら」決めた相手となれば本気度も高く、下手な紹介よりも存続率は。ならば早速に、とネット検索すれどもヒットするは一社にあらず。問われる品質。慈善にあらずんば「無料」とはいかず、人の弱みにつけ込まれはせぬか、との懸念。

昨今は婚活支援に乗り出す自治体も散見されて。直接、担わぬにせよ、既存サイトの斡旋くらいは何とかならぬものか、との声あれども中立を旨とする役所にあって特定の企業に肩入れするは誤解を招きかねぬばかりか、そこに「保証」付すようなもの、「万一」あらば責任問われかねず。役所が介入せずとも良縁求むに婚活サイトはアリだと思うけど。

そう、結婚といえば二曲外せず。メンデルスゾーンにワーグナー。いづれも式の定番、結婚行進曲として有名なれど、幸福感に満ち溢れた名曲にてぜひ一度。

(令和5年7月21日/2794回)