独身

いかんせん二十年前の話にて記憶定かならず。確かに言われてみれば、そんな気がしないでも。ただならぬオーラに際立つ存在感は今も衰えぬことなく。初対面の第一声が「あんた独身?」と。当時は無名の候補者、無職の青年だった訳で、それでも娘の相手に、と胸中にあったとすれば何とも光栄な話であり。

そんな昔話を披露されるに周囲に笑い絶えず、終始和やかな雰囲気の中に解散して迎えた翌朝、聞くは御子息の訃報。葬儀にてかける言葉なく静かに列に並ぶにそんな心境を見透かしたかの如く向こうから。あの前夜とてやはり。その気遣いや。丁重に弔い終えて、合掌のまま、棺を見送った。

枕を高くして寝れるは諸君のおかげ、あれこれと余計な口は挟まぬゆえ存分に職務に邁進あれ、とハッパをかけて読書に耽るが日課。子の教育に同じ、放っておかばそれなりに育つもので、時に何もせぬ選択肢とて。仕事の相談?それは副議長にでも。あくまでも当時の話。

議員の命とあらば拒めぬが役人、呼べば来るし、指示すれば動く。そのへんが勘違いの元凶にて優越感に浸るは勝手なれど、役人にあれこれ命ずるのが仕事とばかり。そのたびに奔走する手間こそ。働き方改革とてITを導入して効率化などと聞けど、それ以上に無駄と思しきこと少なからず、そこが見えぬ限り。

市民の代表者たる我々への報告が二の次とは怠慢、隠蔽を疑われるに不信感だけが増殖されて。先に持って来い、という割にはその後に事態が混乱すれどもどこ吹く風。だったら最初から相談する意義など、というのが彼らの本音に近いところにあるまいか。

さて、移転ならぬ御当地での再編といえども交錯するは個々の利害。ましてや相手が相手、やっちゃばの連中とあらば推して知るべし。んな任務を背負わされるに。求められるは赤字の解消。拭えぬ不安に描けぬ展望。安からぬ投資に許されぬ失敗。市議と現場の板挟みにあって、あれだけ厳しい追及に晒されれば仕事への意欲とて。

難題が山積する中にあって、一向に進展が見えぬ状況続き。質問を駆使して交通整理でもどうか、と若手に告げるに、心配に及ばず、と。この四月の異動にて新たに迎えし上長。粘り強く現場との交渉を進めるに関係者の評判も上々。近いうちに朗報がもたらされるはず。

とすると、やはり当人の手腕に負うところ大か、と続けるに、それもある、が、この間、議会への報告を優先させたがゆえにその過程であれこれと口を挟まれ、向こうに提示した際にもあれこれと。それを一新、現場を優先させた結果。単に順序を入れ替えただけなれど効果や絶大。

こちとて、あくまでも代弁者に過ぎず、現場が丸くおさまっとるのであれば読書でも。ちなみに上長は畑違いからの異動組だそうで。

(令和5年9月30日/2808回)