速記

六十二年の歴史に幕。数多の舞台となりし議場にて最後の採決を終えた。最終日に上程された議案の一つに議会条例の改正があって、一人反対を見せるは会派追われた、いや、離脱した無所属のM君。委員会の採決は挙手なれど本会議は起立。そこの判定は「目視」にて微妙な動作に惑わされることなきにしもあらず。ボタンにすれば即解決とばかり新庁舎では。

あくまでも選択肢の一つとして容認するとの趣旨なれど、そこに門戸を開かばいづれは拡大解釈の下に。有権者の負託を受けた以上は登庁した上で起立というのが。ペーパーレスを理由に支給されしタブレット。持込可とされども向き合う画面を見れば。かえって集中力を削いではおるまいか。便利さが勝るに負の側面とて。M君とてそのへんに反対の理由が。いや、別だ、と本人。

我々なんぞは新庁舎に再会を果たせるも彼らにとっては本当に別れなわけで。寂寥感に惜しむらくは。去り際に一礼向けるは議長席ならぬこちら。捻り足りぬも即興で一句、秋夕焼け鉛筆置かれ速記席。そう、速記の廃止が反対の理由とか。需要減るは時代の趨勢と知るにM君が如く異は唱えぬまでも「彼ら」に対してもそっと敬意が払われても。昔は微に細にそのへん気にかける重鎮がいたはずなのだけれども。

さて、不動産屋にあらねども、よろず請負とばかり。寄せられる相談に土地巡るものとて少なからず。他の市議に依頼すれども右から左で要領を得ず、あれこれと無駄足を運ぶに募る鬱憤。貴殿の噂を聞きつけて、と。既に他の市議が絡んで「否」と下されたものを「是」とするなど。いや、それこそが隠居の仕事であって。

作為か不作為か、現状がそうである以上は占有料が払われて然るべき。なれど、役所方とてただ昔の図面に市の土地が記されているという話にて、実寸ならぬポンチ絵が如き一枚では面積とて。ゆえに放置しておく、いや、そうせざるを得ぬ、というのが。

ならば、逆はどうか。不法占拠などと言われるは不本意。当時はちゃんと対価を払って手に入れた「はず」。そう、あくまでも遺言に聞いただけの話にてこちらも証拠は手薄。いづれ手放さんとするに、事故物件というか、んなものが残されていては売るに売れぬ。いっそ一括にて買い取るゆえ払い下げ願えぬか、との依頼。

役所方とて渡りに船、利用価値のない土地など手放すに限る。ましてや相手方の申出に合法的に整理がつくならば。と用意されるは境界査定なる仕組み。あくまでも公図混乱地域に限った話なれど、市が公費にて全額を負担し、測量を実施。現状に即した形で解決を図る、というもの。現状とあらば了との当事者が大半を占める中にあって、押印はその存在を認める証。

そもそもに寝耳に水というか存在すら認めぬ、なんて関係者がいないとも限らず。ならば、反対の当人を除外して、と安易にいうけれど。測量に欠かせぬは境界の杭、隣りの杭が決まらねばその隣りとて。必要とされる「全員」の合意。ゴネれどもいづれは。

(令和5年10月16日/2811回)