第九

メリクリ、などと申してもこちとら敬虔な仏教徒な訳で。敬虔は余計か。イヴに頼まれるは陳情ならぬケーキの配送。サンタクロースじゃあるまいに。

その生涯はロマン・ロランの著書に知るもミュージカル「ベートーヴェン」が上演中とか。恒例の「第九」を本市が誇るホールで、と機会を探せども回数少なく。あの都内のホールなんぞは連日の公演にいづれも全て完売。かろうじて手にした三等席にて。

道すがら会話が聞こえてしまった。「指定の時間に不在でしたので」-「えっ、これから?さすがにそれは」と困惑を隠せぬ運転手。いかに車両が小型化されたと申しても狭い路地などは戻るに戻れず。一つの荷に得られる配送料は同じ中にあって空振りの手間や何とも。

かたや集合住宅の上階にあって身体的に不自由を抱えた身、玄関でまごつくに、ものの数分とはいかず。当人とてそこに負い目や罪悪感を抱いている以上、「あえて」狙い討たずとも。そう、路上駐車。

目の前の直売所にてものの数分。いや、ものの数分などと申しても実際には、というのが摘発側の言い分。既に貼紙あらばまだしも、巡回員と居合わせる中にあって情状酌量を求めれど、意に介さぬばかりか、その態度が常軌を逸した厚顔ぶり。

私、という名は出さぬまでも市議との関係をチラつかせるに「無意味」と鼻で笑われてしまったそうで。まぁ所詮はその程度、に違いないのだけれども、普段は温厚で善人な当人がわざわざ私宛に連絡を下さるとはよほど憤慨されたに違いなく。その鬱憤の向く矛先や巡回員に収まらず組織全体に。

違反は違反、と正義貫くは結構なれど、その状況が軽微なことは一目な訳で。見逃せ、とは言わぬ。が、そのぞんざいな態度は不必要に敵を作るようなもので。むしろ、「不本意ながら」とでも一言を添えておかば。

こちとて、そりゃ些か不運でしたな、彼らも職務上、などと丸く収めんとすれど、そこまでこじれては庇うに庇いきれず。ちょっとした小火で済んだはずが大火事に。違反の是非以上にそこに消耗させられる神経や互いに損だと思うのだけれども。何とも惜しい。というか、相手の心境に立てぬ、が今の時代。

そう、今回の定例会に目立つはパワハラにいじめ、と対人を巡る騒動。教育現場における被害や少なからず。通報せんとするも相手や身内。事態を調査するにも手心を加えられるばかりか保たれぬ匿名性。筒抜けの情報に沈静化どころかかえって。ましてやそこに明確な定義なく白黒は相手の胸先三寸なだけに冤罪とてなきにしもあらず。相談するに「無意味」であることが件数が少なき真の理由。いっそ、第三者の手を借りて、というのが焦点となり。

借りらば隠蔽は防げるやもしれぬし、当人を断罪して職場から追放、他校に異動とて可能かもしれぬ。が、消えぬはわだかまり。知らぬ存ぜぬと隠さんとするほうも隠さんとするほうなれど、騒ぎを大きくするに、かえってこじれやせぬか、むしろ水面下に、というのが。求められるは対人の資質。やはり日々そのへんを磨いておくに限る。

(令和5年12月26日/2825回)