夏山

これが限界、と断念したはずが、三日も過ぎれば。やはりあの時に無理を押してでも、なんて。一年後の再挑戦などと申してもそこに保証なく。せっかちな性分にて来年まで待てぬ、せめて年内、と物色するに探し当てるはそのレース。確か、折り返しに水着美女が。体力の限界は忘れてもそんな記憶だけは。ゴールならぬ「折り返し」とあらば仮に完走が叶わずと美女に一目。

そもそもに動機は不純というのが世の習いなれど、限界を忘れる位だから記憶違いとてあり得ぬ話ではなく。仮に勝手連ならぬそちらの回し者とすれども当人の格好が格好にて主催者が自ら首肯するようには思えず、そんな時は。確かに「いる」よ。が、あれこそは夏の風物詩。今年は変則の秋開催にて果たして、と。んな殺生な。

レースの完走こそ目標なれど、そこまでの過程、大会に向けた意識こそ健康の源になり得るもので、ゆえに目標までの日程は長く、そして難易度は高く、というのが理想なれど。当面の目標なき中にあっても誘い受けるはありがたく。

そう、昨今なんぞはこちらの悪趣味が庁内に浸透してか仕事の報告に来るついでにそちらの話題に転じること少なからず。報告にも増してどちらが目的か分からぬ。庁内のすれ違いの挨拶とて、暑気払いをぜひ、なんぞは社交辞令が大半、ランバカどもの勧誘、いや、挑発はホンモノらしく。財政のH課長、などそんな一人。次回は一緒に、と約束をして以降、実現は未だ。

私が在籍する愛好会の主流占めるは道路族。それをそのまま言わば「干される」は分かりそうなものなれど。歯に衣着せぬ物言いに、庁内にシンパ少なく、敵だけ多い面々を称して「島流し」の会、と。来るもの拒まず、楽しむことを目的とし、ゆえに規律ゆるく、各自の予定に合わせて途中の合流や離脱も自由、鷹揚をウリにすれども増えぬ部員。まぁ、所詮、島流し、つまりは「左遷」された面々にて。

そんな部員の減少に悩む中にあって、H課長の一派との合同練習を提案するに。彼らこそ虎視眈々と我らが予算を切り詰めんと狙う連中にて心許せぬ、と。んな遊びに仕事を持ち込む奴があるか。逆だよ逆、予算を減らさんと目論む相手を懐柔するにこれぞ好機、と利用せんでどうする、とは言わなんだが、庁内における縦割りの壁は予想以上に厚く。

そう、毎回趣向を凝らした催しを企画いただくのだけど、今回は夏山。いや、確かに現地集合が朝七時、携行品に水四リットルと、そこがひっかからなかったか、といえばウソになり。されど、高尾山と聞くに「散策」程度の軽い気分で。いやいや、山から山へと陣馬山までの往復、延べ八時間。

陣馬山の山頂の売店にて見かけるはカップ麺のみならず。部活動の途中にあって不謹慎かもしれぬ、が、売店に置いてある以上は。こんな時くらいは、と店員の女性に背中を押されて。

(令和6年7月25日/2867回)