短髪

遺伝との関係性や知らず。が、弟が禿げ上がる中にあって、鬱陶しいと思えること自体が贅沢な悩み、か。夏は短髪に限る、とここ数年。衣替え同様、刈り始めが年々前倒しされ。

日に日に耐えかね、前回よりも短く、が入店時の挨拶。これ以上は、との制止を振り切るに。ただでさえデカく暑苦しい顔が余計に、さながら「せごどん」が如く、とは妻なれど、そりゃ南洲翁に失礼ってもんで。この年齢にして髪型よりも大事と知るはゴルフのスコアであり、レースの完走、なんて。

天気を理由に中止を決断するは主催者側なれど戻らぬは出走料。自己都合とあらば尚更にて払い損となる位ならば権利を他人に。安からぬ対価を伴う以上、休まぬに限ると知れど、主に仕える身分とあらば。ぜひ代わりに、と。

そう、数年前まではおらが代議士に仕えていた秘書が突然の移籍。理由は知らぬ。秘書としての評判は兎も角もそちらに関しては私に勝るとも劣らぬオタクぶりにて今も途切れぬ趣味の仲。貰い受けるチケットに記されるアルファベットや「B」。安月給とあらばさもありなん。

当市が誇る自慢のホールにあって席の差異などないに等しいと知れど、さすがに四階席は。そこは勝手知りたるオタクにて格下B席といえども限りなくS席に近く。まさにそのへんが「穴場」と知るはさすがだナ。サマーミューザのオープニングにてチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」を聴いた。

そちらは偶然の産物なれど、こちらは自ら選びし演目。病魔に蝕まれる中にあって最後の舞台、本人の一振りにこそ世に伝えたかった音楽の深淵が。ましてや、そこに選ぶは巷の評価が大きく割れるその一曲にて奇才といわれる当人の解釈を。

直前に知るは指揮者の交代。落胆以上に、もはやそこまで。代役とて急な登板に与えられるはかの難曲とあらば。いえいえ、成否は本番までの稽古が九割、のみならず、楽団員たちの気迫が勝り。鳴り止まぬ拍手は病床の指揮者に。グスタフ・マーラー交響曲第7番。

少しだけ仕事の話。何も杜撰なのは税に限らず。そこは市の土地にて返還して貰わねば困る、と言われても当人には寝耳に水。ばかりか既に上物ありて、そこに許可を下したのは市のはず。いやいや、いかなる理由があろうとも法的な解釈は不法占拠、との応酬。

いま現状の事実だけ見れば市に軍配。さりとて、更地返還を求めるに既存の建造物の解体を伴うは酷と思うが人の情。ましてや市にも負い目ある以上は。いや、逆に返上されても利用価値なく、管理の手間と労力を鑑みれば。よほどの悪質性でもない限り、見て見ぬフリこそ最善なれど、するに出来ぬは他からのツッコミ。市の土地を無償で利用させるとはけしからん、なんて通報が入ったりもして。それも近隣から。

ということで、せめて一筆、いや、市が用意した文書に押印を、と応じた善人少なからず。いや、応じてみたものの念書を残すは後世の憂いとなりかねず。不法占拠とは心外、こちとて、んなセコくはない。ならば払い下げを、と求めてみても本人の意向とは裏腹にむしろ役所の都合にて売却が困難だったりも。

(令和6年8月11日/2870回)