基本

はや四十九日。忘れ得ぬあの日の記憶、と申しても故人ならぬ、そう、サロマ湖。久々の練習会にて遭遇するは過去五回の完走歴を誇るMさん。サロマがウルトラの「基本」、とは傷口に塩か。そんな当人にも。

レース途中に感じた膝の違和感。続行の無理がたたって翌日以降も治らぬ痛み。近所の整形外科に通うに一時的に痛みはひけども完治には到らず。紹介状を片手に訪ねた専門医にて示されし選択肢は二つ。人工関節か骨削る荒療治か、前者とて日常生活には何ら支障なく、年齢を鑑みればそちらのほうが、と勧められども本人選ぶは荒療治。そこまでに走りたいのか、と医師に聞かれて、「ええ」と。

術後のMさん、この夏に挑みしは本州縦断・青森~下関1550kmフットレースR8(新潟~舞鶴)ステージ 535km(制限時間240時間)。12時間の余裕を残して完走を果たされたそうで。この10月には美女待つ奥武蔵(70km)に挑戦するとか。ちなみに、Mさんの年齢や七十代も後半、傘寿、つまりは八十歳に手が届かんと。サロマが基本というだけの資格は。

さて、本題。歩道に置かれたベンチの老朽化が著しく、市に対応を求めるに。既存のベンチ所有者の了解なくば撤去は出来ぬ、所有者は御存じか、と逆に聞かれて、そのまま受話器を。知恵を貸してくれぬか、との依頼あり。

かつて、駅前広場の古びたベンチの交換を、との陳情を受けて、かけあうは交通局。バス停にはベンチ欠かせず。倉庫に在庫を抱えていることまでは調べがついており。地元の為に一つ拝借を出来ぬか、と頼めど、倉庫のベンチはあくまでも市バス利用者の為のものであって、と相手。

んな殺生なことを言うな、そもそもに市バスなどおらが北部にほとんど見かけぬ、南部に偏在する理由やおぬしらとて。路線なき以上、せめて贖罪のベンチ一つでも融通せい、と屁理屈をぶつけるも通じず。

が、今や議長も終えた身にあって、たかがベンチの一つも融通出来ぬとは胸の徽章が泣きかねず。当該地にて周囲を見渡すに目にするはバス停、それも市バス路線とあって、欣喜雀躍、担当者を呼んで経緯を告げるに当時とはまるで。

「所有者を探せ」とは随分な対応、役人の風上にも置けぬ、と。そう、そこが肝心なところでやはり相手に寄り添う姿勢なくば。

新規のベンチはこちらで何とか、ただし、既存のベンチの撤去はごかんべんを、と。

道端に置かれたベンチの扱い。見方によっては歩行者の通行の妨げになりかねず、それも許可なく勝手に置いたもの。所有者に撤去求めるべきも不明とあらば市が撤去せざるを得ず。が、撤去後に利用者から逆に責められはせぬか、とすると違法と知れど何もないままに「放置」というのが彼らの正解な訳で。

そう、不法投棄とて相手が勝手に捨てたもの。捨てる場所など相手は選ばず、不運にも民地とあらばそちらの責任で、なんて役所はいうけれどもほんの数米には公道あって、撤去するにさほど手間は変わらぬ、と説けど、彼らには譲れぬ一線らしく。

たかがそれしき、されどそれしき。そこを巡って争うは不毛。その溝を埋めるがセンセイなるものであって。

(令和6年8月25日/2873回)