聖夜

方々に断られる誘い。先約あり、などと見栄をはらずとも。連夜続きし忘年会に、その日だけ「自宅」というのも気乗りせず。咎めぬ家人、疑われぬは信頼の証、というか夕飯を作る手間が省けて結構、と。そんな境遇を嘆くに同情を寄せるはI区長。なんだ男か。

やはり市議なんてのは退屈させておくに役所のあらさがしが始まること必至。ゆえに日頃から目を他に向けさせる、エサを与えておくというのが役人の知恵、そう、ゴルフとか。とするとI君も。いや、彼もまた職場と自宅に居場所がなかっただけ、かもしれぬ。

されど、聖夜にオッサン二人で熱燗を片手に振り返る定例会。誰それの質問は稚拙だ云々、くだ巻くはカッコわるく。区長たるもの仕事のみならず諸事に通じておらねば部下の面倒など。「生」演奏の機会は未だ、と聞くに。

退職年の聖夜に第九、それも市議と、なんてのは生涯忘れえぬ思い出になるはず。そう、クラシックにせよ、ランにせよ、ゴルフにせよ、そりゃたまたまそういう人に巡り合ったのがきっかけであって。縁とは不思議なもの。

そう、ついこないだ、近所の御婦人A子さんから届きしメール。県の婚活イベント好調、との記事に本人のコメントなく。図りあぐねる真意。フツーに読まば、市も同様のイベントを。いや、深読みすれば、気立てよき御令嬢の相手探しの依頼とも、それにしては婉曲過ぎるな。アレコレ悩む中につつがなき返信を。

婚活を巡る話題や県に限らず。取り上げるは当選同期の浜田昌利センセイ。この御仁の質問はいつも均整が取れて聞きやすいばかりか、ツカミは「朝ドラ」が定番。その解説が絶妙で場面描写を市政にあてはめ。今回はなぞかけ、甲とかけて乙ととくその心は、と。両者の距離が遠ければ遠いほどウケる、との前フリに続くは、おにぎりと婚活。悩み悩めど結び付かなんだ、と本人。オチなきオチ、というのがオチ、だそうで。

詳しくは会議録に譲るも要約すれば、役所はもっと婚活に注力すべし、と。御節介が幅を利かせたのも今は昔。恋愛とて自由になれど、関係が煩わしいとされる時代にあって結婚は重荷とばかり。いやいや、そりゃ偏見、出会いあらば、との声も少なからず。古今東西、相手の弱みに付け込むが彼らの常套。マッチングアプリと聞くに。

主催が役所とあらば不安は払拭されるやもしれず。されど、イベントと申しても多勢に無勢、一部しか。それでいて何かと制約多きが役所。そもそもに市がやるべきことなのか、とのそもそも論。庁内に所管課なく、いっそ婚活課でも。複合的な要因が絡むだけに提供する側、される側。そして、何よりも良縁、運にも左右され。良縁は「外」に出ないと。聖夜とて、そりゃ別か。

定例会も閉幕。忘年会に居合わせしA子さんに提供の御礼とそんな市議会の様子を伝えんと近づくに。「そう、この前、間違えて送ってしまったの、ごめんなさい。わざわざ御返事まで」と。ならばあの意味深なメールを何処に、とは聞かなんだ、いや、聞けなんだけど。

(令和6年12月25日/2897回)