求人

当時はサッカー部のレギュラーなれど、ゴールに向かって一直線に突進する姿はどう転んでも今の肩書に結び付かず。転校後の消息を知るは数年前、中学時代の同級生がN証券のシニアアナリストにて。

友情かこちらへの期待か、読むべし、と推挙されるは安からぬ経済本が大半を占め。んな本ばかり読んどるがゆえに。いや、直近の一冊や「エリート過剰生産が国家を滅ぼす」(ピーター・ターチン著)であって、ようやく自らの立場が。

やはり、本は歴史小説に限る。教科書なんぞは純粋に史実のみゆえ人物像など知る由もなく、そこは虚構と知れど心に「じーん」ときたりもするもので。あの狂歌は世に知られたところ。悪政とされた時代とて人は。田沼意次の生涯を描いた小説、平岩弓枝著「魚の棲む城」はよかったな。

就職に結婚こそ親の二大関心事にて。その手の相談少なからず。私ごときの口添えが役立つならば、と告げるに。逆だ、逆、と相手。求めるは高卒。広く人材を求めんとするにツテに乏しく、会社の知名度低く。

さりとて、創業以来、数十年、特殊な分野にて業績はすこぶる堅調。選ぶ選ばぬは彼らの勝手なれど選択肢は一つでも多く、と。何よりもこの御時世にあっていい人材を得んとの相手の熱意にほだされて。

月給たったの1万円で自立が図れるか、「宅急便」の生みの親が創設したスワンベーカリーの挑戦はつとに有名ながら立ちはだかりし現実の壁。企業側とて手を差し伸べたきが情なれど、いざ採用となるに。義務化と申しても中々進まぬ障害者の雇用。

就労支援に手を上げんとの事業者から相談あり。準備進めるに懸念や二つ。一つ目は新規立ち上げに利用者は集まるか、二つ目に利用者が集れど仕事やいかに、と。高齢者にとってのシルバー人材センター、一般の職安が如き機関あれども認可前にあっては紹介は困難と。そりゃ確かに、その為の機関なのだからまずは認可を、とはやむなき対応。

仕事が先か求人が先か。そもそもに利用者の目的は仕事にあり。優先すべきは仕事の確保と知れど、働き手おらぬ中に先行して発注するおひとよしの会社なんぞ。んな彼らの悩みを代弁するに協力を申し出るは道路公園センター。これが本当に親身に応じて下さり。手つかずの公園の清掃はどうか、と。

清掃ボランティアには少額ながら謝礼金あり。その程度で納得いくならば、と地図を広げて。現場が遠くては申し訳ない、なるべく近くの公園を、とは役所の親切心なれど、彼らの狙いや金銭ならぬ症状の改善にあり。むしろ遠ければ遠いほど体力づくりにもなるばかりか、道すがら新たな発見とて。

金銭の多寡以上に、そこに自分たちの仕事がある、自らの存在が社会に役立っている、という人としての心の満足感こそが。かたや、その公園の清掃を手がけるは障害者の方々、とは市側にもいい宣伝となる訳で。

やはりモノは相談してみるもの。思わぬ道が拓けたりも。人に喜ばれてこその役所にあるまいか。

(令和7年2月10日/2906回)