浪人

久々の再会の第一声や子の合否。合格祝いと手にするは自家製のおから。相手以上に背後への気配り欠かさぬ人柄に教わること少なからず。多摩区の豆腐屋けんちゃん、ありがとう。

さて、陳情ならばいざ知らず、ボケ防止の話相手に指名されるは些か不本意ばれど、それも世の為、人の為、か。同じ受験生と申してもこちらは子にあらず。晴れて孫が合格を果たしたそうで、喜びもひとしお、かと思いきや。

合格をつかむに十校を受験されたらしく、当人がボヤくは出費。一校あたりの受験料は安からず。身は一つにして、それ以外は捨て金となり。親の懐を察するに、本命、挑戦、滑り止め。それとて吟味に吟味を重ねて厳選の三校が妥当。下手な鉄砲じゃあるまいに云々と。

家では言えぬ愚痴の聞き役が私とは些か不条理なれど。今どきはんなもんですよ、私とて国立含めて四校、でも、当時は親の負担なんて考えなかったから。そもそもに子の負担ゆえ貴殿には。何よりも浪人とあらばそれでは足りぬ。いや、浪人とて塗炭の苦しみに流す涙は決して無駄ならず。来年こそは、との日々の努力はいづれ必ず。

刻一刻と迫る本番。募る不安に高まる緊張、のしかかる重圧。んな時に限って直前に生じる不測の事態、腹痛とか。そう、再挑戦を控えるは私とて同じ。されど、本番近づかねば。どことなく緊張感に欠け。とりあえず「模試」でも、なんて。

途中におでんありなどと聞かば食指動かぬはずはなく。茶にみかん、久能山の石垣いちご。穏やかな気候風土は家康公も愛した土地。見てよし、食ってよし、走ってよし。

朝六時台の改札にごった返す人の山。東京と名古屋の中間にて日帰り圏内とあってか、参加者一万人の大レース。私もその一人にて、移動は当日の始発との心づもりのまま、数日前に待ち合わせを聞くに朝六時に新横浜発の新幹線に乗らば、と同伴者。

いや、待てよ、始発とて間に合わぬではないか。約束が違うと騒ぐに、見かねたN君が車で迎えに、と言って下さるも遠回りになるゆえ。町田、新横浜に宿を探すに安からぬ宿代。いや、ほんとに高く。何せシャワー浴びて寝るだけだから。

いっそ深夜に車で。それでは翌夕刻の大事な会議に間に合わぬ。何よりも運転とあらば完走後のビールが、ならばいっそ。静岡駅周辺とて大会に便乗してか安からず。それでも何とかこの価格帯ならばと。夜八時に会合を終えて急ぎ足で駅に向かうに降り続く雪。現地の到着は夜十時過ぎ。

静岡マラソンを平凡なタイムで完走を遂げた。スタートが市役所前の駿府城公園ならばゴールはそちら。合併後は一つの区となるもかつては。Jリーグでもかつてはあのオレンジが。完走後の打ち上げこそがマラソンの魅力、いや、「目的」であって。どこもかしこも予約であふれ。そうそう、この賑わいこそが。まさに経済効果なれど、前年などは全く逆。閑古鳥が鳴く商店街に人が戻りし理由や。

今年から地元の居酒屋が日曜の昼間、午後の開店を始めたとか。何せそのままでは静岡駅に流れてしまう、と。店を探さんとするに一服どうか、と茶の専門店の店主。オッサン六名が至福の表情を見せるに近づく妙齢の女性。取材に協力を、との依頼に饒舌で。最後に一枚と、アーケードの看板の下にて完走タオルを広げて。これで観光冊子の一面は。

翌日の昼食は好物の増田屋のかつ丼。まぁ一日位は。その油断こそ大敵と知りつつも。

(令和7年3月15日/2912回)