遺影
日に百球のM君からの電話とあらば。実は明日、と切り出されるに。ヒマ人と申してもさすがに翌日の予定位は。いや、勿論、貴殿の多忙ぶりは十分に。とりあえず「そういうこと」にしといてくれぬか、と。
ふむ、そのへんの口実に利用されるは慣れたもの。それで家庭の平和が保たれるならば。されど、ゴルフ場の指定まで、それも近場ならぬ隣県の名門、そこに「いた」ことに、とは随分と手の込んだ工作に見え。意図など聞かぬ、「わかった」とだけ。あれから十日。それらしき気配なく。
遺影に見るは笑顔に声が聞こえてきそう。「センセイ、朝採れた大根を持ってきたよ」。大勢の参列者の目を惹きし画面に流れる写真の数々。見入るに「全て」ゴルフとは。いや、確かに野菜届くはゴルフの帰り。趣味とは知れど、そこまでの「狂」だったとは。享年八十五歳。年相応の往生も死して記憶に残りしE子さん。兎に角、華のある人だった。
さて、本題。「今さら選ばぬ、残りで結構」と他に身を任せて配属されるは総務委員会。各会派屈指の精鋭が揃うに未だ無所属に敷居を跨がせず。最も権威ある委員会とされども、とにかく開催が「多く」「長い」ことから。
年度早々の議題に上がるはその話題。論客のI君曰く、総合計画に盛り込まれる成果指標は各事業局が定めし目標を総務局が精査して付された数値。とは知るところも状況は流動的にて時に変更あって然るべき。変更が不可などとは言語道断、と憤慨するI君。
当人の言い分によれば精査側の総務局は変更を是としたものの、事業局側は否。とどのつまり、庁内に二重基準がまかり通るは意思疎通が図れていない証拠、組織としてどうか。いや、食い違う言い分の整合性を検証するに両者立ち合いが理想なれど、今この場に事業局を同席させるはかなわぬ話。
ゆえにおぬしら総務局に申し上げるが、事業局側の怠慢を許してはならぬ、もっと積極的に介入すべし。要約するとそんな論旨だったはずで。よくぞ申した、まさに正論、と世の喝采を浴びそうに聞こえるが、市議の話を鵜呑みにするなんぞ。僭越ながら以下は独自の分析。
精査側は変更可と言ったとされるも意味合いは一つに限らず。成果指標なる目標数値は「絶対では無い」との意味だったとすれば。かたや、「不可」側とて、変更を認めては何の為の計画か、安易に変更すべからず、との立場かもしれぬし、572全ての事業を入念に精査したと公言憚らぬI君にあって、当人が「かくあるべし」と示した要求を拒んだだけかもしれぬ。
自らに都合よき論旨を組み立てて意に沿わぬは悪と断ずる、なんてのも。とすると過度な介入を促すはかえって余計な対立を生みはせぬか、との懸念。いや、そこは役人同士、彼らのほうが。
(令和7年6月5日/2928回)
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