系譜
年頃の娘からの相談とあらば、つまりは。彼氏を前に説くは家の系譜。恐れおののく相手にその後の恋の行方や。そうやすやすと娘を渡せるか、あれでよかった、と述懐する父。当の娘やさぞ落胆かと思いきや。
ハラスメントなる単語が氾濫する世にあって聞くに聞けぬはその手の話。過去に御一緒すること幾度か、趣味はテニスに旅行、ワイン。容姿に性格、そして、何よりも年収とて十分。私と同世代の当人が「独身」「バツなし」と知るは母親の一言。未だ相手が、とこぼすに。昔ならば欠陥品が如く浴びせられる視線。が、今や。
こちとて既婚か否かなど。むしろ遊び相手はしがらみなき独身者の方が。そもそもに、んなことでしか人を見れぬはバッチや役職に群がる「彼ら」に同じ。私がゴルフに誘われるに肩書は関係なく、問われるは、ただ相手としてどうか、って話。さりとて、やはり縁はないよりはあったほうが。
久々に訪ねし御宅にて話題に上がるはそちらの話題。理想の相手が見つからぬ、かたや、恋は盲目、若き衝動に駆られて入籍したものの、なんて。その多さに国の末路を案じるTさんや九十歳。県西の古い集落の御出身なれど、村内の縁談は周囲が勝手に。そこに自由はないやもしれぬ。が、第三者の見立ての方が、と。当初はそこに不満を抱くやもしれぬ、が、生活を重ねるうちにやがて気づかされる互いの相性とそれを見抜いた年長者の人物眼。
そう、あれ以来、顔を合わせる二人の舞台や人にぎわいし区民祭。互いに組織に身を置くもの同士の宿命、とこちらが言いかけるに遮る相手。いや、上が何と言おうと我々の友情は永遠だ、と私の手を両手に握るはその人、かつてそちらの政党に属された元副議長であり。
閑話休題。依然と旺盛な住宅需要に近隣トラブルへの介入を求められること少なからず。市議の権限で何とか、と。
敷地内に子の家を。完成間近のある朝に突然、壁一面に紙が貼られ。あわてふためく当人から連絡が。まずは出頭、行先は区役所の建築課に、と告げて番号を回すは課長の直通。くれぐれも穏便に。兎に角「目立つ」その貼紙や罪悪感を抱かせるに十分、ばかりか、その言葉の響きが。誰が名付けたか通称「赤紙」。これ以上の工事は認めぬ。即刻中止せよ、と。
そう、かつては区役所に専門の課があって。法律と申しても人の手によるものである以上、どこかしらに恣意が介入する余地が。何せ許可なくしては建物が作れぬのだから彼らが有した権限は絶大。つまりは彼らの監督権を有する市議とてそれなりの。
かつては役所の独占とされた許認可権も自由化の波に。今や九割を民間が占めるとか。とするにかつては現場にて権勢を誇りし彼らも組織は縮小、本庁に集約されて。それこそが行革、と呼ばれるも現場からGメン消えるに。そう、あの頃は鬼のK岡とか、キャラが立った連中が。
(令和7年10月15日/2954回)
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