アルテリッカ

首都決戦に敗れたとはいえども依然吹き止まぬトランプ旋風。今週は大票田フロリダを含む予備選挙、果たして結果やいかに...。ということで、そんな同氏と対決した日本人の話題を週刊誌に見かけた。まぁ兎に角その手の人物は勝負事というか賭け事好きなことが多いんだけど、時同じくしてウォール街の帝王ことジョン・グッドフレンド氏の訃報を聞いた。
ソロモン・ブラザーズ社の中興の祖。マイケル・ルイス氏の著書「ライアーズ・ポーカー」にはこんなシーンが登場する。トレーダーとしては過去の栄光、生き馬の目を抜く世界で次々と現れる新星を品定めするかの如くフロア内を闊歩するワンマン経営者グッドフレンド氏の次なる標的はウォール街で一番の債権トレーダーとの呼び声高いメリウェザー氏。儲かろうが、大損しようが相手に表情を読ませぬポーカーフェイス、日本語でいう胆のすわった同氏に挑む種目はインディアン・ポーカーならぬライアー、つまりは「うそつき」ポーカー。
「一手、百万ドル、泣き言なし」とグッドフレンド氏。メリウェザー氏にとっては勝てば上役の機嫌を損ね、負ければ大金を失うという圧倒的に不利な状況に立たされ、周囲が固唾を呑んで見守る中、同氏が取った行動とは...。「百万ドルではタイマン勝負に安すぎる。1千万ドルでどうか」と切り返すメリウェザー。恐怖心におののく相手の姿を見て愉しむ度胸試しの上手をいく世紀の対決は社の語り草だとか。
さて、それを目的に帰宅した訳ではないのだが、期せずして「白熱教室」を見ることになった。今回の登場人物はベートーヴェン。英国ロイヤルアカデミーの教授が曲を解説する。「ここでこう音階が変わる、そこにはこんな意図が隠されている」-「ふ~む、なるほど」と夢中で聞き入っていたのだが、隣で洗濯物を干していた妻が「多分、そんなに深く考えていないと思うけど」とひと言。そんな幻滅するようなこと言うなヨ...いや、意外とそんなもんかも。
さて、贋作の多さは人気の証、光の魔術師レンブラントに影響を与えたとされるカラヴァッジョの作品展が上野の国立西洋美術館で開催されていて、機会を狙っているものの、未だ恵まれずに悶々とした日々を過ごしているんだけど、こちらだけは顔を出した。そう、アルテリッカ新ゆり美術展。選挙の原動力というか大票田となる麻生区いけばな協会の作品はぜひ見ておかねば...違うナ。
職業に貴賎はないというけれどもそれが食い扶持になるのはほんのひと握りの方々のみ。支援者の御令嬢が演劇に没頭されていると聞いたけれど金銭の対価を求めずに夢の実現の為に必死な若者の応援団でありたいと思っている。映画「エヴェレスト-神々の山嶺-」では伝説の登山家、羽生丈二を演じる阿部寛氏の演技が群を抜いていて、同氏をはじめとする舞台上がりの役者は総じて表現力が豊か。