予知

アンダルシア地方のミハスを訪ねたのは若かりし頃。コスタ・デル・ソルに降り注ぐ太陽と青い地中海を見下ろす丘には白に統一された色調の美しい町。移り住んで来たもの同士、良好な景観と街並みを維持することを目的とした地区協定には植樹指定や壁塀の色彩、区画の最低面積等々が含まれて、それが地区の魅力に繋がっている。
さりとて、老齢を理由に土地を整理して転居するにしても区画の細分化が図れなければ買い手がつかぬとかコンビニすらないとかその規制が時には仇となることもあるらしく近隣関係がギクシャクする火種の一つ。予めそれを承知で移り住んできたのではないかと言われればそれまでだが、当時とは事情が異なるだけに当事者になってみねば分からぬ悩みに同情の余地ありかも。
さて、われらがJAと農政に関する勉強会が催された。JAが生産者の立場を代弁しているかといえば、そこに組合としての損得勘定が加味される上に、ここまで肥大化すれば農家の寄合所帯というよりも立派な金融機関であって預金高が支店の評価を左右する位だからそのへんは割引が必要なんだけど都市部の農政は税制と一体。
とりわけ相続税なんてのは人の死期が絡むだけに予知出来る筈もなく、対策を講じようにも近親者の死が前提となるだけにどうも好かん。が、手を打たねば先祖代々の土地や財産をごっそりと没収される上に、いざ土地を売却して財源を捻出しようにも相続だと分かれば相手から足元を見られかねず。人生に運不運はつきものだけど特定の方々を狙い討ちして財産の大半を失わせるような理不尽な税制はイカン。
で、もう一つが、土地の利用用途の規制。高度経済成長期における地方からの人口流入、過度な宅地化を抑制することを目的に都市計画法が制定された。法律により市街化調整区域に指定されたエリアでは建物に厳しい規制がかけられてその見返りが固定資産税の減免措置。が、ただでさえ土地不足の都市部においてそこを不動産として上手く活用出来ればと勝手に建てられた違法建築物。
巡回や近隣からの通報により不穏な動きを察知する当局は解体撤去を求める貼り紙に行くものの、十中八九は確信犯にてそれを剥して工事を進める業者とのいたちごっこが続く。あそこの建物が許されて何でウチがダメなんだというのは理由にならない理由なんだけど自らの財産が絡むだけに当事者側も必死の抵抗。役所側とてそこで目をつむれば次なる第二第三の台頭を許しかねないだけに断固許さぬと執拗に追い回すものの、あくまでも民地上の話だから自ずから限界がある訳で...。