大明神

人生も折り返しを過ぎればどこかしらに疲弊が生じるもので時に違和感があればもしやよからぬ病では...との不安が脳裏をよぎったりもするんだけれどもそれほど簡単に死ねるものではないとT氏。そんな驚異の生命力を裏付けるかの如く人ってのは走った距離の倍は走れると本に読んだ。が、フルマラソンを往復して「更に」となると未知の領域なだけに逡巡していたんだけれどもじっとしているのは性に合わんから兎にも角にも走る距離を重ねることに決めた。
忙中閑あり、どれほど忙しかろうとも日に2時間位は何とかなるもので、脂肪の燃焼は継続するから運動は早朝に限ると聞いて、なるべくそのへんでやっているんだけど、「この程度では...」の恐怖心から日課の練習量を上げれば数日後には下げるどころか更に上げようとするのは禁断の症状か。当初は自己の限界に挑戦などと申し込んだはずが、もしや完走出来るんぢゃないかなんて勝手な妄想が生じてくるのだから不思議。それにしてもこんなにがむしゃらに物事に没頭してるのって初陣の選挙以来かも...。おい、今までの仕事は何だったんだって。
そう、噂の鉄人などはこのGWに「川の道」なる大会に出場されて完走を遂げたとか。 コースは荒川河口の葛西臨海公園から荒川を遡り、秩父から県境を越えて今度は千曲川を下り途中から信濃川と名前を変えて、日本海に注ぐ新潟市の河口までの総延長520km。30日の朝9時にスタートして、5日の夜9時が門限の制限時間132時間。距離も距離だけど横断ってことは当然のことながら峠を越えねばならん訳で何とも「贅沢」なレースなんだけど完走を遂げた鉄人の御齢は...73歳、大会最高齢だそうで、脱帽。
さて、ここ何年か地元のM平氏から誘いを受けてアルテリッカしんゆりの寄席を御一緒させていただいているんだけど、今年は直前に急用が生じたらしく、相方を探していたんだけれどもGW中にそんなヒマ人なんて...いた。外遊自粛の通達を律義に守ってこないだも駅頭に見かけたN代議士。為政者たるもの人の機微も知らねばならぬし、向こうは話術の達人にて教わることも少なくないはず...などと親切心で打診すれば、ヒマだったのは私位なもので当人は多忙を理由に固辞されたものの、折角の誘いを無碍に断れぬとの気遣いか代理で秘書のS氏をと。
ここだけの話、また、これが秘書としての評判は冴えんのだけれどもその仕事ぶりは別にして何かと物知りで重宝するもんだから私などは勝手に「大明神」などと敬っているんだけれども聞けば当人の御子息だか御令嬢だかがこの春に都内の難関私立高に合格されたらしく、まさに下剋上受験を地で行く父親ぶりで世の動向から塾の裏事情、合わせ技なんてのまでまさにその分野のオタク、いや、失礼、受験の道案内人。
寄席の最後の演目はボロをまとった一文無しの宿泊客が稀代の彫刻士だった、人は見かけによらぬと諭してくれる「竹の水仙」にてつい隣を見てしまったんだけれども以外にも大明神はナマ落語は初めてにて目から鱗だったらしく、そのへんの御悩みがあれば特別講師に招きますゆえぜひお申し付けを。
(平成29年5月8日/2346回)