機種変

「いま、暇?」、これが後援会長であればその口調に違和感を抱いたんだろうけど、地元のK兄とあっては疑うべくもなく。二つ返事で「明日は質問日なので事務所で原稿書いていますが、何か御用命あれば...」と、その人のよさが災いしてしまった。
「携帯の機種変したんだけれども君の番号を紛失してしまって」との依頼に返信すればLINEの再登録に四桁の認証番号が必要とかでその携帯にメール届くから教えてよと。ものの30秒もせぬうちに第一報の着信が鳴った。「やまちゃん、アカウント取られているぞ」。以降は着信が殺到して深夜までその対応に忙殺されることになった。元々のK兄のアカウントも既に占拠されていたらしく、それを囮に籠絡された私のアカウント。二経路認証という手口。
経歴には外資系ITなどと謳う割にはそちらにはとんと疎く、それとて田舎の同級会の連絡に不都合だからと友人が作ってくれたものなんだけど放っておくと勝手に輪が広がっていくと聞いて身内にしか見えぬ設定にしておいてもらったはずなんだけどそれも解除された上にパスワードまで変更されてやりたい放題。とにかく早い。知人宛に片っ端から私のアカウント名にて金銭依頼のメールが届いたとかで、まさにリング上でノーガードで打ちのめされるボクサーが如くただただ狼狽するのみ。大半がそのへんのやりとりの過程に不信感を抱いて気付いたか、金銭の依頼にヘンではないかと。そう、私は票「しか」お願いせんから。
そういう時に駆け込み寺としての警察はほんと役に立つもので通されたのは慣れぬ取調室ながらも当直が本部の専門家に指示を仰ぎつつ、親切に対応してくれて。その犯行手口や状況などは再発防止の参考になるそうで事情聴取に応じることになった。私とK兄の会話履歴もしっかりと写真に撮っていただいたんだけれどもほんとこちらのいい人ぶりが見てとれるんだよナ。明日には署長にも報告を上げておきますのでと、おい、そんなみっともない報告は要らん...とは言えなんだ。
そう、持つべきは友で義侠心に厚い古巣の相棒などはオレが犯人を成敗してやると意気込むがそこに費やす時間こそ社会的損失。そもそもに犯人とて私の名を語っても然したる信用も無い訳でそこで搾取できる金額と手間、リスクの釣り合いが全く合わん。既にアカウントも停止されて被害は今のところ聞いていないんだけれどもM姉などは私の一大事とばかりに指示通りコンビニまで足を運んでレジの前ではたと気付いたというのだから間一髪。いい人なんだナ。
何よりも私自身が金銭の被害に遭うのはやぶさかではないけれども私を信じて他人様が被害を被ったとなると余計に気分も重く。だますよりもだまされたほうがいいんだけれどもあまりにも大きすぎる代償。ほんと一部の皆様には御迷惑をおかけしてしまった。オレオレ詐欺、振り込め詐欺なんぞも何で実の息子かどうかも分からんのかと被害者が叱責されるけど大半はその異変に気付く訳で、ただ、百に一つでも一瞬の間というか、その時の状況や複合的な要因が重なることでふっと吸いこまれちゃうことがあるんだろうナ。
ということで寝不足に疲労困憊のまま一般質問を終えた。
(平成29年6月25日/2358回)