辞書

上位数%の富裕層が全体の何割を占めるなんて話はよく聞く訳で多忙の原因を分析すれば意外と特定の方々に振り回されていたりもして...。
独占形態の随意契約は時代にそぐわぬ、門戸を開くことで業務改善を図るべきだとの申入れがあって、競争入札となった結果、市の負担が随分と軽減された。まぁそのへんまではありがちな話なのだけれども落札した金額では割に合わぬ、上げてもらわねば年度途中に撤退せざるを得ない。と、そりゃ自ら撒いた種であって、ならば最初から安値で落札せねば良かったではないか。
そもそもに相手を排除しておいて独壇場になった途端に手のひらを返すなんてのは卑怯也。いや、内情を申し上げれば設備投資を伴うものゆえ修繕等の分が賄いきれぬ、入札の度に不安に晒されては腰を据えて専念できぬから複数年契約に...。が、聞けば市の発注金額にそのへんは織り込み済だそうで、そこに納得いかずば具体的な数値を持参した上で膝詰め交渉を、と指示しておいたはずなのだけれども当人から信頼に足る数字が示されなかったと報告を受けた。
御恩と奉公、持ちつ持たれつ、さすがに盆暮れの付け届けとは言わぬまでも担当とて人の子、任せて安心とあらば多少の差配位は「いづれ」認めてくれるやもしれぬ、急いては事を仕損じるからくれぐれも信頼を損ねぬよう慎重にと御助言申し上げて、「わかった」と受話器を置いたはずなのだけれども、翌朝には着信があって「昨日の件だが、やはり...」。で、具体的な言い分は然して変わらず「納得いかぬ」の一点張り。それが週に1回どころか日に数回。
夫婦間に同じ、適度な距離感ってのが大事であって(ほんとかね)、そんなに執拗に追い回されては逆効果。まぁ私などは柳に風と慣れたものだけど、慣れぬ担当者とあっては他の業務に支障をきたしかねず。それもそれが当人の意向でありながらさも「私の」意向であるかの如く担当に迫り、逆にこちらには担当者が進める上でセンセイの後押しを求めていると。そのたびに意思疎通を図るもんだからいつしか「向こうに限ってそんなことはありえぬ」と妙な連帯感が生まれ。話半分、ダマされぬようにとの警戒心は怪我の功名か。
まぁ万事そんな調子ゆえ匙を投げても良さそうなもんだけど妄想癖というか何事も自らに都合よく解釈しちゃう性分にて根からの悪人に見えぬところが本人の魅力というかせめてもの救い。親父というよりも祖父の年齢に近く、既に御子息も立派な社会的地位にいるのだから早く隠居して老後の愉しみでも...と諭すのだけれどもその齢で衰えぬ事業意欲に教わることも少なくなく。
詐欺師の話は面白く、詐欺師の詐欺師たる所以は相手を信じさせることにある訳で。庁内会議後の机上に「会社が倒産しそうだから至急連絡を」とメモがあった。どうせまたいつもの...。その手の伝言は鉛筆のはずが、目立つ太いマジックの文字も本人の指示だそうで。さすがにこんどばかりはほんとのオオカミかもしれぬ。と、信じさせてしまうところが向こうのほうが一枚上手で。当人の辞書に因果応報の文字は無いんだろうナ。
(平成30年2月15日/2411回)