胴元

主役級の配役とはいえども舞台への出番は限定的。袖と中央では客席の視線が違う。発言者にでもならぬ限りはその他大勢に紛れて寝ていても、いや、目を閉じていても...否。小舞台といえども真剣そのもの相手に最前列中央が指定席とあっては目を閉じるどころか神経を研ぎ澄ませて...五十数団体の要望を聞き終えた。
まぁ厳密に申し上げれば二手に分かれるからおよそ半分なのだけれども。一方を仕切るのは市連の政調会長でもう片方が団長。内容のみであればメールで事足りるも貴重な時間を割いて訪ねて下さる以上は文章からは読み取れぬ内情を酌まねば代弁など出来ず、こちとてやっつけ仕事では早晩愛想を尽かされるのがオチ。
入札を巡る悲鳴は今に始まったものではないけれど、そもそもに予定価格そのものが根拠ある適正価格にてそこから何割か落とさねば発注せぬなんて仕打ちもどうかと思うけど、競争を促さねば堕落しかねぬとの本来の制度の趣旨も分からんでもなく、改善された最低制限価格は概ね高評価。
新規参入は新陳代謝を促すも垣根を越えた異業種の参入に異端児の落札。低い垣根に殺到する市「外」業者。敵方など垣根のみ高く攻めるに攻めれず防戦一方、折角の納税者が干上がっちまうぢゃねぇかと向けられる不満。ならば垣根を見直すか、否、どこぞの市などは競争を促す分野と市内業者を育成する分野を隔てる匙加減が絶妙だとか。
収まらぬ大自然の猛威、西日本の豪雨災害に平静戻ることを願うばかりも近年は災害への関心高く。備えあれば憂いなしと進む災害協定。その件数やうなぎ上りにて五百件に迫らんとするのだけれども件数のみが注目されて形骸化、実効性伴わぬ紙片一枚に成り下がってはおるまいかとこのたびの定例会の質問に含めておいたのだけれども。防災訓練にまで駆り出されて市に恭順の意を示す私どもと署名捺印はあれども姿見えぬ幽霊と入札時の下駄の高さが同じではかなわぬと。
役所の現場部門などは業界事情や業者動向などに詳しくそのへんを含めて任せて安心、意中の相手がいようとも監視の目が光っていては...。入札は全て財政当局の一部門により仕切られるんだけど職務上、金額しか見とらんことも少なくないからね。公明正大に結果は全て公表しとると胸を張るが、やはり場を仕切る胴元なのだからその入札が好循環を生んでいるか、社長のみならず社員の家族はメシが食えているか、施工時の手抜きはないか等々の隅々まで目を光らせてこそではないか。
そう、今回の団体の一つに、いわゆる耳が不自由で手話通訳者を必要とする聾(ろう)者の団体が含まれるんだけど、そちらの要望に市立聾学校の存続の一項目を見かけた。当事者がその必要性を説いて下さり、十分に頷けるものなんだけれども存続が危ぶまれる背景には生徒数の減少が深刻とか。他の生徒と同じ学校に通わせたいとの保護者の意向に障害者差別解消法やノーマライゼーションの理念により分け隔てなく受入進む実態。
語られる美談に我が子を想う親心こそ否定されるものではないものの、その選択が時に複雑な結果をもたらすこともあるらしく...。
(平成30年7月10日/2440回)