天和
元号ならず、「テンホウ」と読む。一巡目の自摸(ツモ)で上がるは地和、他人様の捨て牌ならば人和。親は子よりも牌一枚多く、最初の配牌ままの和了はまさに天祐以外の何物でもなく。
勢い勝る新人に対する現職の不安。が、どう見ても有利は現職。二回目にくすぶらば以後の上位見込めぬと田中和徳センセイに教わった。報道少なき地方選、「所詮は...」と思われているかは別にして取り上げられぬ分、地道な当人の評価が如実に現れやすく。票の多寡でバッチの色が変わるもんでもないのだけれども増減は地元の耳目、役人の見る目とて「コイツは再選の目が無いゆえ適当に...」と思われても。国政ならば二位は比例復活、やはり小選挙区で当選してこそ。
人の心を掴む以上に掴み続けるは至難。順調に積み重ねて首位に肉薄、桁上の大台に迫るも挑む相手は五回連続首位を死守する難攻不落の最古参。こちとて期を重ねれば逃げる票もある訳で首位狙うは今回限りと臨んだ四年前。元旦はおらが後援会長との地元神社の参拝が仕事始めにて用意された封筒に「目指せトップ当選」とあった。賽銭箱に入らば後に誰が入れたか明らかにて願い叶わねば恥。自らに重なる意を酌み、並び大願成就を願い挑んだ桶狭間。
王者が減らしてこちらが伸びたものの「若干」にて届かず。決して手を抜いた訳ではないのだけれども悔い残る結果に動揺隠せず。「雪辱」と申してもこちとて五回連続積むはさすがにキツく、相手転ぶなんて他力本願は...。確か座右の銘ではなかったか。自ら欲す以上に後援会長はじめ地縁血縁なくともヨソ者を支持して下さった皆様方に応援した甲斐があったと喜んでいただかねばとの気概が勝ったこたびの選挙。
地元の消防団長に見込まれ未成年から駆り出されて経験した選挙は数知れぬ後援会長も今や古希。少数精鋭とは申せ、連投に連投重ねる戦に悲鳴を上げる面々に「四年に一度しかない機会にて今やらずしていつやるか」と、最終日は自らマイク片手に候補者よりも先陣を切って遊説に飛び出した。随分先からまだ声が聞こえるよと残留組。
迎えし開票。いち早く結果知るは開票立会人なれど、そりゃあくまでも「立会」が本来の任務であって厳しい監視下に置かれるから連絡など出来ぬ。昔であれば厠の窓からメモを落として外で待機中の斥候役が公衆電話に走り...。いづれにせよ結果はまだかと待ち受ける事務所への連絡役が必要なのだけれども今回は会長自ら買って出た、というか勝手に行っちゃった。その瞬間を見届ける為に。
ちゃんと告示日前、っていっても四年間に種は撒いといたのだけれどもこればかりは農作物に同じ、どれだけやろうとも見えぬ相手の布陣に当日の天気が投票率を左右する世界だけに拭えぬ不安、「当選圏内も着順は三位」などとの下馬評聞かば根拠なき予想屋による風説の流布を疑ってみるも。静まり返る事務所に張り詰める緊張感。届くメールに伝わる鼓動。「今一万だ、トップだ」のメッセージに本人の興奮ぶりが窺い知れた。
不思議とツキに恵まれた一戦。「掴んだ」というよりも「降ってきた」栄冠は天祐か。これで肩の荷が一つ下りた。
(平成31年4月10日/2492回)
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