黒塗

件の民営化も役所こそ抵抗勢力、唱えた本人が大臣とあっては誰も寄り付かず。が、そんなことなど意に介せず、当人なりに孤独の時間を謳歌したと確か名物秘書の著書か何かに読んだ。あてがわれた「専用の」執務室、かろうじて元の部屋にも机は残していただいているものの、戻れば戻ったで期下にからかわれ、ならば私も...と孤独を謳歌しようにも歴代の写真に囲まれていては行動を監視されとるようで落ち付かぬ。
群がるは人気の証、記者に抱負聞かれて饒舌になるべきも失言は命取りになりかねず。「慣れぬ役職にてとりあえずは前例を踏襲しつつ、開かれた議会を...」-「具体的には?」-「まずはその分厚い壁を取っ払って...」。税金の無駄です。年季の入った机の上には見慣れた固定電話。外見は元の机上と同じながらもこちとらあてがわれし専用の番号。かけるは直通なれど受けるは秘書。いつも通り陳情の対応を依頼すべく相手の内線回せばこちとら名乗らずと向こうから口にする役職、よもやそこだけ特別な着信音だったりも...。いや、同じです。
相次ぐ車の事故。罪なき善良な方々、幼き命が失われる悲劇は見るに堪えず。またか、と高齢者に向けられる冷やかな視線。雑な運転は齢のみならず一概にひと括りにされることへの抵抗感は分らんでもないけど年齢による劣化は大自然の摂理にて自主返納が進むことを願いつつ。有名人のオーラというか見えぬ風圧。ウッズが5mならばこちらは20m。あれだけの地位を得ながらも愛車のハンドルは手放さなかったとは前職時代の上役の談。アップル創業者スティーブ・ジョブズ氏の話。
聞いたのは随分前の話なのだけれどもそんな小言は記憶のどこかに残るもので、専用車は「いらぬ」と申してみたものの、あれこれと理由に押されて。初志を貫徹出来ればひとかどなんだけれどもそもそもにその器にあらず。あてがわれて悦に入るは当人位なもので世間様の見方は逆、ヘンな警戒心だけは人一倍にて「せめて隣の駅に...」。そんなセコすぎる申出は却下されたものの、ドアの開閉位は自ら...。そりゃ当然です。まぁ自ら記していて、いつぞやの旋風に予期せぬ当選を果たした御仁が重なり。
鵜の目鷹の目、そんな大役を仰せつからば好むと好まざると注目される、出る杭打たれぬよう言動はつつましく、というか言わぬが花。任期中の中断か継続か、いや、叩いて埃出ぬよう過去一切を...。何をバカな。日々あれだけの報告を受ければネタに困らず、役所の資料をコピペすれば労少なくして効果抜群、より「高尚」に見えるばかりか堅実な評価にも繋がりそうだけど、それで読者の共感生めるか。
同時代を生きた二人の文豪、鴎外に漱石と割れる評価。作品に甲乙つけがたくもより親近感を抱くは漱石。何と申しても読者飽きさせぬ文章力に見る端倪すべからざる才能。そこに相手の時間を費やしていただく以上は退屈させぬ、というか共感生めるものでなくては。まぁこんなモノは読むだけ時間の無駄と知るも憚りつつ...。
(令和元年5月25日/2501回)