修身

秘密裡の尾行、本来は別容疑もその過程において掴みし思わぬ性癖、というか嗜好。さすがに次官ともならば身辺に警戒払って然るべきも議長如きでは...と歩きつつ気になる背後。「本書の92%は現実である」と謳われた帯に手に取りし一冊。根拠示されぬ数値はあくまでも著者の主観。主観ってのは恣意的な分、時に都合よく利用されかねず。
抜く抜かないの判断は相手次第。同じ行為とて人により合否分かれるとは理不尽ではないかと時に同情を寄せたくもなるのだけれども卑劣な行為に泣いた人は数知れず。そんな被害者を救済すべく成立した法律も罰則なく実効性云々の記事を見かけた。あの御仁の発言とてその前後の脈絡抜け落ちては本人の胸中分からず。何も気分害されるはその言動に限った話でなく。その断片的な一節を以て差別的だとか権利侵害だなどと騒がれても。ならば万人に支障なき言動とは何か。
自ら撒いた種とはいえ、あそこまで集中砲火を浴びると火の粉が及ばぬ程度に救いの手を出してみたくなるもので。御節介が過ぎただけの話で意外と口ほどに腹の中は悪ではないのではないかと思わんでもなく。まぁ最近などそんな昔気質な親父もとんと見かけず、どことなく寂しさ覚えるのは私だけか。酒癖悪い上司の説教然りそれを理由に拒否するは権利なれど逆に拒んで逆恨みを買わば元の木阿弥、ならばいっそとことんまで...ないナ。
相手を不快にさせる言動は厳に慎むべし、と知りつつもいつしか知らずと加害者になっていたりもするもんで、時に反面教師ってのは必要悪ではないかと。何よりもそんな攻撃浴びる中に処世術を磨く機会が埋もれていたりもする訳でそのへん克服することに人生の妙味が...ないナ。まぁそれとて誘われても拒んではいけないなどと片方を正当化するもんでもないけど、過ぎたるは及ばざるが如しにて時に間違った権利意識の横行は国の将来、というか本人の為にもならんのではないか。世間こぞってそこまで目くじらを立てずとも...。
「自らみすぼらしい一書生のくせに政治家とか実業家などと言えばこれを毛嫌いして心中ひそかに軽蔑している程度の狭小な了見でどうしてその教え子たちの中から将来国家社会に貢献するような大人物が生まれようか」と文中にあった。占領下にあっては検証すら許されぬ、時代背景がそうさせたとは申せ、過去の全否定はどうか。「修身」などと言わば戦前の教育勅語に繋がりかねぬとの偏見、ならば全否定した戦後教育が立派な若人を生んでおるかと問われれば...。年齢が圧倒的に違うとは申せ、昭和初期に生きた方々に教わること少なくなく。
ひょんなことから森信三氏の「修身教授録」を読んどるのだけど教師を目指す若者へ心構えを説いておられて、そんな目から鱗の講義録を見つけしエラい先生が本著を必携の上、全国教壇行脚に出かけたとか。そちらの道を志望する人ばかりか万人にぜひ読んで欲しい一冊。そんな一文すらも魔女狩りに遭う息苦しい時代が来ぬことを願いつつ。客観性がないからこそあれこれと解釈が成り立つ訳でそんな勝手な思い込みを綴って読者諸賢に判断をいただくってのがまた何とも...。
(令和元年6月6日/2503回)