川浜

足裏は内臓に通ず、その道の権威が「健康」の主治医の一人なんだけれども先生曰く三十分以上の運動は逆効果とか。かと思えばラン仲間の一人でもある歯科医の先生によれば空前のブームにいづれ膝痛の患者増は免れぬなどとこぼされれば脅しにしか聞こえん訳で。老後の心配なぞは出たとこ勝負と無謀にも昨年同様...いや、「上乗せ」で申請を終えた。迫るオクトバーランの目標距離は内緒、というか、それ以上に時間をどう捻出しようかと。
県の議長殿から案内届き、祝賀会に顔を出した。当選回数のみでいえば同期の桜なのだけれども向こうは血統馬、いわゆる「世襲」なれど暗愚ならぬ積み上げた実績は当日の参加者が物語る。父君はかつて県政に君臨された首領にて既に御隠居の身なれど息子を案じてか血が騒ぐ政治家の性分か久々に御姿を拝見。
いや、拝見どころか水向けられて壇上で一席ぶったのだけれども人の将に死なんとすその言や善し、齢九十にして「自らの葬儀には必ず来てくれ」との前口上に始まる挨拶はさすがの名演ではなかったか。そう、当日が開幕日にて不在の隣市の議長の行方を邪推しておれば見透かした同市の市議が一緒にどうかとパブリックビューイングに誘って下さって臨場感あふれる特設の会場にて麦酒片手に見知らぬ方々と歓喜の声を上げた。ラグビーならずとスポーツの魅力はその一体感。さすが横浜市だナ。
種目の栄枯転変に絡む時代背景。野球なら「ドカベン」に「巨人の星」、サッカーならば「キャプテン翼」、バスケならば「スラムダンク」と続き、ならばラグビーといえばコレ抜きには語れぬ。目下、爆風スランプ「ランナー」とZRAD「負けないで」がマラソン曲の定番なのだけれどもこちらの主題歌を入れて三大にでも。俳優の山下真司氏などはこの役柄がその後を決定づけたと申しても過言ではあるまいに。
架空の舞台「川浜」は川崎と横浜より一字づつなどとトリビアじみた話題は豊富なれど主人公の不良生徒の名はこの人に由来するとか。大八木敦史著「我が道」を読んだ。並はずれた体躯に天真爛漫な性格、主将とは違った圧倒的な存在感はドカベンの岩鬼に重なり。故平尾誠二氏とのコンビは知られたところなれど痛快な自叙伝には日本人初のオールブラックス入りを狙ったなんてのもあって。前著は挑発的な題名の「ラグビー校長、体罰と教育を熱く語る」にてアスリートのセカンドキャリアと子供の育成を目指した教育実践を説かれているのだけれども避けて通れぬ体罰論。
地位の威光を傘にした卑劣な制裁は断じて看過出来ぬもその全否定の裏にはヘンな平等思想が根底にあって。そりゃ理想として説く意義は否定せぬも現実の社会には理不尽が横行しとる訳でそのへんを隠したまま理想だけを教えるから現実に適応できぬ生徒たち。今どきならば発禁扱いの青春ドラマにはそんな場面が少なからず登場するも似た場面を経験した同世代は数知れず、されど、当時を振り返ってあれは体罰だったという奴がどの位いるか。むしろあの親心に勝る鉄拳こそが更正の転機と語る不良連中は少なくないはず。
次戦の相手は屈指の強豪アイルランド。どれほどの身長差があろうとも倒しにいかねばならんのがラグビーにて。
(令和元年9月25日/2525回)