覆面

刺青の前科者ぢゃあるまいに何故に入店を拒まれねばならんのか。口論こそせぬものの理由聞かば横に連れた中学生。県の条例にて深夜の外出は厳禁、午後十一時迄の帰宅が義務付けられとると。さりとて、こちとら塾帰りのメシに長居するもんでもなく定刻前には勘定済ませると譲歩したのだけれども物理的に不可能と頑なな姿勢崩さぬ相手に御紋見せることなく(まぁ全く役に立たんけれど...)余儀なく退店。何ら確認なく入店許す、いや、許して「くれた」隣の店員が事情聴取に応じてくれた。
少し前に近所にて摘発あり、その警戒感ではないかと。保護者同伴の塾帰り、且つ、車移動にて酒絡まぬとなれば公序良俗に著しく反するものでもなく本来の趣旨にそぐわぬとこぼす妻に対して、子の関心は...その手口。摘発は「明白」な証拠が必要、ゆえに警官の立入による現行犯が原則、五分といえど定刻前の立入では相手にアリバイの隙を与えかねず。さりとて、定刻後の立入とて外からでは店内が見えぬ、空振りに終わるどころか営業妨害にて逆に訴えられかねず。
となると、まずは店員若しくは隣席からの通報、それとてかなりの迷惑客か過敏な隣人の癪に障った可能性、若しくは、平素の店側の姿勢がそのへんに寛容というか無頓着、又は別の理由で狙われていた可能性。私服警官、いわゆる「覆面」なるものの存在を教えれば塾以上に大きな収穫だったらしく。後から入ってきた一人客ももしや...そんな藪から棒に疑っちゃイカン。
閑話休題。いつも報告に来るは管理職にて現場の声が届かぬこと少なくなく。たまたまの市バス運転手と話す機会に恵まれた。管理職への不満はいづこも同じ、その一つに呼気検査に関するものがあった。他人様の命預かる仕事にて乗車前の呼気検査が義務付けられていて万が一の発覚後には厳しい処分が下される。されど、前夜に警報機なく、「つい」もある訳で模索される抜け道。
「代打」などは言語道断も本チャン前の予備器などに赤が出れば出勤記録残さずにそのまま帰宅の途につくとか。営業所などは辺鄙な場所、且つ、深夜早朝の勤務もある訳でバスの運転手には自動二輪等の通勤が許されとるのだけれどもそのまま帰路とならば往復の運転時において「クロ」ではないかとの疑念。検知器は法令よりも「若干」厳しく設定されているからそこに些かの冤罪の余地が残されているのだけれども、進む携帯型の検知器の貸与に通勤時の飲酒運転防止の徹底。何よりも前夜の抑止力に...でもないか。
そう、本市公演はMセンセイの悲願。詳細は以下(令和1年第3回定例会-07月03日-08号)に譲るも劇団夜想会による待望の拉致問題啓発舞台劇-めぐみへの誓い-奪還-の本市公演を鑑賞する機会に恵まれた。連れ去られし移送中の船倉の中でもがき苦しんだ爪痕、悲しみに打ちひしがれた当時の苦悩から四十年、既に向こうの人として...。いや、幼児期に注がれた親の愛情は終生潰えぬと信じて疑わず。が、それも再会あっての話、原田大二郎氏演じる父親の年齢八十七歳、胸打つ迫真の演技に「一日も早い帰還を願っています」と感想に記した。
(令和2年1月25日/2549回)